第８話 宴会にゃ
村に戻った俺達は酒場で祝勝会を開いていた。
「今回の討伐の功労者と言えば、やはりゴブリンキングを倒した『にゃんこ』だ。『にゃんこ』に乾杯！」
酒に酔ったエドニスがジョッキを掲げ叫んだ。
「ウォーッ！にゃんこに乾杯！」
ちょっと恥かしい号令で皆が乾杯をしている。
いつの間にか、皆、俺のことを『にゃんこ』と愛称で呼ぶようになっていた。
カウンターでエリスが身体ほどのジョッキに頭を突っ込んで酒を飲んでいる。
妖精は人間以上に酒に強いらしい。
シデンとフィーネは店の中央で踊っている。
俺はテーブルの上で中学生のときに習得したブレイクダンスを披露していた。
思う存分踊った俺がカウンターで飲物を注文しているとバロンが声を掛けてきた。
「来人、今回は活躍だったな。一人でゴブリンキングを倒してしまうとは思わなかったよ。」
「にゃはは！いやぁ、まぐれ、まぐれ。運が良かっただけにゃ。」
俺は、笑って答えた。
「そんなことは無い、動きを見れば分かるよ。」
「そうかにゃ。褒めても何も出にゃいよ。」
「来人、ギルドにはまだ登録していないんだったな。」
「こっちに着たばかりだから、まだだにゃ。」
「よかったら登録しておかないか。普通ならランクＦから始めることになるんだが今回の活躍の特例でランクＤに登録できるぞ。身分証明にもなるしギルドの斡旋する仕事もできるから便利だぞ。」
「にゃんこ、登録しておけよ。」
横からシデンが声を掛けてきた。
「そうだにゃ。登録するよ。」
「よし、手続きはこっちでしておく。明日にでもライセンスをギルドまで取りに来てくれ。」
「了解にゃ！」
「ギルドに登録するなら、俺達の仲間に入らないか？妖精剣に。」
「そうだな、そうすることにするにゃ。」
俺は不慣れなこの世界で頼もしい仲間を手に入れた。
俺としても何処かのパーティーに入るほうが都合が良いと考えていたのでシデンの誘いは渡りに船であった。
こうして、俺は冒険者ギルド所属のランクＤの冒険者、妖精剣のにゃんこ騎士来人となった。
「ところで話の感じから、来人は、異世界人なのかい？」
バロンが話題を俺が異界人であることに変えた。
「そうらしいにゃ。気付いたらこの世界でこんな姿にゃ。」
「そうか、それは大変だな。」
「バロン、俺が元の姿に戻る方法を知らないかにゃ？それと元の世界に帰る方法とかもにゃ？」
「俺は人を獣人にする話や異界に行く方法は聞いたことがない。」
「そうにゃ、残念だにゃ。」
「しかし、魔法国マリジアの魔法大学に行けば何か分かるかもしれないな。」
「マジリアにゃ？」
「マジリアは魔法が発展している。来人の姿も魔法による呪いと考えれば何か分かるかもしれないぞ。」
「本当にゃ。」
「マジリアに行くには今いるローマシアから歩いてダリス国かミシワール国を通らなければならない。この村はローマシアの南にあるのでミシワールを経由して行くのが近い。だけどミシワールとローマシアは戦争状態で通れない。遠くなるがダリス国経由で行くしかないだろう。」
「俺たちも特に仕事の依頼は受けていないフリーだ。北に向かってダリスからマリジアに行ってもいいぜ。」
「シデン、助かるにゃ。」
「いいってことよ。それまでがっちり仕事を手伝ってもらうからよ。」
翌朝、俺はシデン、フィーネ、エリスと共にギルドマスターのバロンを訪ねた。
「来人、ちょうどライセンスカードが出来上がったところだよ。」
俺は、バロンから銀色の名刺位の大きさのカードを手渡された。
カードの表には、
冒険者ギルドライセンス
ランクＤ
にゃんこ騎士 来人
と書かれており、俺の似顔絵も描かれていた。
カードを傾けると俺の絵の角度も３Ｄの様に傾いた。
原理は分からないが魔法で描かれているそうだ。
「表は、誰でも見れるようになっている。裏にステータスが浮かび上がるようになっているが、持ち主にしか見えないようになっている。」
カードを裏返して見ると
レベル１２
職業 にゃんこ騎士「魔法騎士」
体力 １２４ 魔力 ９０ つよさ １０４ すばやさ ２５５
スキル ？？？
と書かれていた。
レベルが１ではなく１２なのはゴブリンキングとの戦いでレベルが上がったからだという。
参考までにバロンにきいたところ、バロンは、ランクＢの戦士で
レベル４５
職業 ギルドマスター「戦士」
ＨＰ ２５１ ＭＰ ４０ つよさ １８７ すばやさ １１２
だと言うことだ。。
あくまで数値上の話で必ずしも数値が高いものが勝つというわけではないらしい。
しかし、俺の場合すばやさが反則レベルに高いらしく更にレベルアップしていったら分身の術とか使えるかもしれない。
基本的に異界人はステータスが高くスキルについては異界人特有のもので分からないとのことだった。
俺はすばやさが桁外れに高いことは隠しておくことにした。
俺達はゴブリンキング討伐の報酬を受け取ると村を出発した。
取り合えず街道を北に向かいローマシア国の首都リーンに向かうことにしたのである。
