第79話 黒龍王にゃ
ドーラは龍珠から発せられる恐ろしく強い闇の力に恐れを抱いていた。
ドーラは龍珠を使いモーリス島に封印された黒龍を解放するつもりだった。
黒龍の力でこの世界の支配するつもりだった。
「こんなことは聞いていないぞ、ティア!」
頭上に飛んできていた闇の妖精のティアにドーラは叫んだ。
「ドーラ、貴女も御苦労様。ついでにもう一つ役に立って頂戴ね。」
「何を!」
ドーラはいつのまにか龍珠から伸びた光に包まれ宙に浮かんでいた。
ドーラの左右には同じように気を失なったジュノとギリアが浮かんでいる。
「動けん、ティア!貴様何をするつもりだ!」
ドーラ達から大きな光が龍珠に流れ込んでいく。
「ち、力が抜ける!」
シェードが年老いたのとは違いドーラ達は変身が解けて身体がどんどん縮んで小さくなっていった。
身体が縮むにつれ、龍珠の輝きが大きくなっていく。
そして突然、龍珠が大きく輝き弾けた。
光が治まった時、龍珠が存在していた空間に漆黒の甲冑を身に纏いマントをはためかせた美形男子の姿があった。
「アスラ様。ティアにございます。」
ティアが美形男子の前で頭を下げた。
ドーラ達を包んでいた光も同時に消え失せドーラ達が地面に落ちた。
「ティア、これは、どういうことだ、そいつは誰?」
ドーラがどうにか身体を起こした。
「あら、流石にしぶといね。いいわ、教えてあげる。このお方は黒龍王アスラ様。この世界の王となるお方よ。」
「ティア、ここは騒々しい。」
「分かりました、アスラ様。静かな場所に参りましょう。」
ティアはアスラを連れて戦場から飛び去ろうとした。
「待て、ティア。貴様、私達を騙したのか!」
ドーラ、ジュノ、ギリアは、ふらつきながら立ち上がった。
そして、ドーラがアスラに向かって光弾を放った。
光弾は、真っ直ぐにアスラに向かって飛んでいった。
しかし、光弾はアスラに当たる直前で消滅した。
アスラはドーラ達を見下ろすと右手を向けた。
再びドーラ達の身体から光が吸いとられる。
ドーラ達は更にエネルギーを吸いとられて身体が縮んでいく。
スポン!
軽い音がしてドーラ達からエネルギーが全て吸いとられた。
残されたドーラ、ジュノ、ギリアは老人ではなく小さな子供の姿となっていた。
「ドーラ、あんた、子供になってまちゅ!」
「うちょー、私の自慢の身体が。」
「あはは、ドーラもジュノも小さくになってまちゅ!」
「ギリアあんたもでちゅよ!」
さっきまで俺達と死闘を繰り広げていた3人の魔人は可愛い子供の姿となってしまった。
こうなると流石に戦う気にはなれない。
それより問題はアスラという男である。
アスラは黒龍の牙で作った短剣を取り出しエネルギーを注ぎ地面に投げた。
短剣は一気に膨れ上がり巨大な黒い地龍が出現した。
ギャオー!
アスラは地龍の姿を満足そうに眺めてティアに声をかけた。
「ここはもう良い。ティア、行くぞ。」
「はい。」
アスラとティアは何処へともなく飛び去ってしまった。