第78話 決戦にゃ10
俺とシデンはドーラの懐に飛び込んで剣を連続して振るっていた。
「くそ、ギリアとジュノは何をしているのだ!人ごときに倒されたとでも言うのか?」
勝利を確信していたドーラは思わぬ増援に苛立っていた。
俺とシデンにとの戦いに集中していたドーラをブリットが頭上から急降下攻撃をしかけたのだ。
遠距離からのフィーネが弓でエリスが精霊魔法で援護する。
妖精剣の連係攻撃によりドーラは確実にダメージを受けていった。
「こんなはずでは!」
ドーラの脳裏に敗北の二文字がよぎった。
そんなドーラの目にミシワール軍の中に巨大なゴーレムが出現するのが見えた。
そしてゴーレムの上にシェードとミーナの姿が見えたのである。
シェードは黒い刀身の短剣を手にしていた。
「あれは、黒龍の牙で作った短剣!何故、シェードが持っている。」
次の瞬間、シェードはミーナの胸に短剣を突き立てたのだ。
しかし、ミーナの胸からは一滴の血も流れない。
やがて短剣の刺さったミーナの胸が光輝き出した。
シェードがゆっくりと短剣をミーナの胸から抜き去る。
短剣の先には光輝く金色の玉が付いていた。
その場にいたものは声も出せず、その様子を見ているだけだった。
「あれは、龍珠!」
ドーラが呟いた。
シェードは龍珠を短剣の先から手にとるとミーナを離した。
ミーナは意識がない様子でまっ逆さまにゴーレムから落ちていった。
「ミーナ!」
マリウス王は叫びながら落ちていくミーナに向かって駆け出した。
しかし、マリウス王のいる場所からはミーナを助けるには遠すぎる。
マリウス王の手が宙をむなしくもがく傍らを金色の光が走った。
「電光石化!」
ミーナが地面に激突する寸前、金色の猫が走り込みがっしりとミーナの身体を受け止めた。
金色の猫とはにゃんこ騎士こと俺のことである。
「大丈夫にゃ?」
「来人……ありがとう。」
ミーナが意識を取り戻した。
そこにマリウス王が駆け寄ってきた。
「ミーナ、身体は大丈夫か。」
マリウス王は思わずミーナの胸に手を当てた。
バシッ!
容赦ないミーナの平手打ちがマリウス王に炸裂した。
「お父様、どさくさに紛れてどこを触っているのですか!」
「だ、大丈夫、元気のようだ。」
そこに頭上からシェードの笑い声が聞こえてきた。
「ハ、ハハハッ!この龍珠の力で俺がこの世を支配するのだ。」
シェードは龍珠を両手でかかげていた。
シェードの元へ何処からか闇の妖精のティアが飛んできた。
「ティアよ。龍珠だ、龍珠を手に入れたぞ。」
龍珠を掲げたシェードの様子が次第に変わっていく。
手や顔にしわが出来、まるで老人の様な姿に変わっていった。
「これは、どういうことじゃ!」
「御苦労様、シェード。あなたの闇の心は龍珠の封印を解く良いエネルギーになったわ。」
「おのれ、ティア。俺を騙したのか!」
シェードはへなへなとその場に座りこんだ。
「シェードの旦那。この闇の妖精め!」
ギルはレイピアを抜くとティアに斬りつけた。
ティアはヒラリと剣をかわし届かない位置まで飛んで逃げた。
龍珠はシェードの手から離れて飛び、ティアの目の前に浮かんだ。
「まだ闇のエネルギーが足りないみたいね。」
ティアが視線を向けた先にはドーラがいた。