第74話 決戦にゃ6
俺の連撃がドーラの防御を破ったかのように見えた。
だがドーラは俺の剣が当たる直前に後ろに身体を捌き俺の剣を躱していたため、致命傷を与えることが出来なかった。
しかし、ドーラの腕には血が滲んでいた。
「おのれ、この私に傷を!」
ドーラから、凄まじい闘気が吹き出し、身体が徐々に膨らんでいく。
変身による、パワーアップ。
ドーラの身体は一回り大きくなり女性らしい妖艶でスリムな身体からボディビルダーの様なゴツイ身体に変貌を遂げていた。
「私はこの姿が一番嫌いなんだよ。ゴツゴツして美しくないったらありゃしない。だから、この姿を見たものは生かしちゃおけないんだよ。」
ドーラの姿が蜃気楼の様に揺らいだ様に見えた直後、ドーラの姿はその場から消えた。
次にドーラが現れた時のはシデンの目の前であり、その瞬間ドーラが拳を突いていた。
シデンはドーラの突きを腕を交差させガードした。
吹き飛ばされたシデンは腕からメキッと嫌な音をさた。
地面にシデンの足が引いた2本の線が延びる。
「ぐ、腕が折れたか。魔法を使わぬ、ただの突きがなんてパワーだ。」
シデンの両腕はドーラの重い突きによって折られていた。
「シデン、大丈夫にゃ!」
「問題ない、まだ戦える。」
しかし、力なく下げられた両腕にシデンの腕が折れていることは容易に分かった。
くそ、魔法使いタイプかと思ったが完全にパワータイプじゃないか。
俺は心の中でつぶやいた。
「これでゆっくりその猫の相手ができるよ。」
ドーラは冷たい笑いを浮かべた。
俺とドーラが一騎打ちする傍らでマリウス王とデューク対ギリアの戦いが続いていた。
マリウス王とデュークはギリアに対して善戦していた。
ギリアは致命傷こそは受けてはいないがデュークの連撃とマリウス王の強撃の連携攻撃に翻弄され苛ついていた。
ギリアもドーラ同様に変身によりパワーアップすることが出来る。
だがマリウス王とデュークの切れ目のない連携攻撃によりその僅かな間が取れないのであった。
更に苛立ちから動きが雑になり攻撃を受けてしまっていたのである。
しかし、ギリアの渇望していた僅かな時間が思わぬところで手に入ったのである。
ドーラの放った大量の光弾による無差別攻撃がギリア達の戦っている場所に及んだ。
ドーラの光弾によりマリウス王とデュークは一瞬、ギリアとの距離をとったのである。
「チャーンス!」
ギリアは一瞬で腕が四本、下半身馬の姿に変身を遂げパワーアップ状態となった。
「よくも、今まで痛めつけてくれたな。」
ギリアは高速で走り抜けながらマリウス王とデュークに斬り付けた。
咄嗟にマリウス王とデュークはギリアの戦い方に反応できず避けるばかりであった。
「まずいぞ、デューク。」
「大丈夫ですか、マリウス王?」
「私は、大丈夫だ。しかし、あのスピードをなんとかしないと。」
「そのことで私に策があります。」
ギリアは一気に形勢が逆転したことに上機嫌であった。
マリウス王とデュークの周りを走ぬけながらワザと軽く斬りつけ二人を痛めつけて喜んでいた。
調子に乗ってマリウス王とデュークの間を走り抜けたギリアは何かにつまづき顔面から地面に突っ込んでいた。
「な、何が起こったのだ!」
顔を上げるとマリウス王、デュークがお互いに端を握ったら細い糸状の物を見せた。
「忍特製の鋼線だ。ドラゴンだろうと繋ぎ止めることができる。」
ギリアが自分の足を見ると鋼線がからみついている。
「何だこれは!」
「そろそろ終わりにしようか!」
マリウス王とデュークは剣を振り下ろした。
「ひぃ」
ギリアはマリウス王とデュークの一撃を受けて情けない悲鳴を上げ気を失なった。