第72話 決戦にゃ4
モーリス軍の本陣は百人程の兵の奇襲に完全に混乱していた。
「おのれ、またお前達か!」
ドーラが怒りに目を燃え上がらせ、斬りかかってきた特務部隊の兵を裏拳一発で吹き飛ばした。
そのスリムな身体では信じられない程の力であった。
ジュノは奇襲してきた特務隊の中、ブリットの姿を見つけた。
「猫耳の金髪、見つけたぞ!」
ジュノは歓喜の笑みを浮かべ、大きく跳躍するとブリットの前に立ち塞がった。
「抜け道で会った魔人ですね。懲りないですね。またやられにきたのですか?」
「あの時は私も油断していたんでね。あんたが強いのは分かった。今度は本気で戦わせてもらうよ。」
今日のジュノは全身を覆う赤い鎧を身に纏い右手に剣を握っていた。
「では、私も本気で応えましょう。」
ブリットは嬉しそうに笑いながら構えた。
いきなりジュノは前回に対戦した時と比べものにならないスピードで間合いを詰め、ブリット顔面にに拳を叩き込んだ。
まともにジュノの拳を受けてブリットは吹き飛んだかの様に見えた。
しかし、ブリットは顔の前で腕を交差させて防御していた。
「確かにこの前とは別人のようですね。」
ジュノは鎧を纏うことで防御力が上がった分の防御の魔力を攻撃とスピードに回したのだ。
「しかし、私も以前のままでいる訳ではありませんよ。電光石化ライト!」
ブリットの身体が金色に発光する。
電光石化ライトは俺が使う電光石化の簡易版だがブリット本来のスピードを加速するので効果は絶大だ。
ブリットはジュノとの間合いを一気に詰めるとジュノの顔面に拳を叩き込んだ。
ジュノはブリットの拳を受けて吹き飛ばされる。
しかし、ジュノもブリットの拳を腕を交差させ防御していた。
「では、これなら、光視力ビーム!」
ブリットの目から発射された光線がジュノに炸裂する。
一瞬、怯んだジュノに背後から後頭部に鋭い蹴りを入れた。
これには流石のジュノも吹き飛び地面に頭から突っ込む。
激しく舞い上がった土煙が晴れるがそこにジュノの姿はなかった。
直ぐ様、ブリットはジュノの気配に上空を見上げる。
ジュノは土煙に隠れ上空へ舞い上がっていた。
その背には翼が生えていた。
「空を飛びますか、これは、厄介ですね。」
「元々、これが私のスタイルだ。地下では飛ぶことは出来なかったからね。」
そう言うとジュノは凄まじいスピードで急降下するとブリットに斬りつけた。
ブリットはジュノの剣を体を捌いてかわした。
しかし、確かにかわしたはずのブリットの身体が切り裂かれた。
ジュノの鎧の形態が変化し、腕や足の鎧が鷹の爪の様に変わっていた。
ブリットがジュノの剣をかわした時、ジュノの蹴りがブリットの身体を切り裂いたのだ。
「どうした、さっきまでの余裕はどうしたんだい。」
ブリットはジュノの急降下からの剣に突きや蹴りを織り交ぜた変則の攻撃に翻弄され次々と攻撃を受けていた。
致命傷にはならないもののブリットは、攻撃をするとすぐさま手の届かな上空に間合いを取るジュノを攻めあぐねていた。
「これは、どうしたものでしょうね。」
しかしダメージを受けてなおブリットは戦いを楽しんでいた。