第71話 決戦にゃ3
マリウス王の参戦により戦況は変化していた。
ローマシアの兵はマリウス王の参戦に士気を高めて猛然とモーリス軍に反攻を始めた。
モーリス軍の鶴翼の陣形は右の翼を折られた形となっていた。
「ドーラ、俺はマリウスの相手をする。」
ギリアはそうドーラに叫ぶとマリウス王に向かって走り出していた。
「く、ギリアめ、勝手に動きよって。まあ良い、ジュノ、お前はまだ動くなよ。」
ジュノの耳にドーラの言葉は届いていなかった。
「くそ、あの猫耳の金髪はいないのか!」
ギリアは馬をも凌ぐ脚力でマリウス王とデュークの前に対峙していた。
「よくも私の姿で好き放題してくれたな。貴様は私の手で退治してやる。」
マリウスはギリアが己の姿に化けて好き放題にしていたことをドーラから聞かされていた。
ドーラはマリウスにそれを聞かせ精神的に追い込もうとしたのである。
「敵に簡単に捕まる間抜けな王にやられる俺じゃない。お前の役目は終わっているんだ。舞台からご退場願おう。」
「抜かせ!后や娘が人質でなければ、お前等には負けぬ。」
マリウスはギリアに斬り掛かって行った。
マリウスは両手剣の使い手である。
体重を乗せた重い打ち込みを連続して叩き込む。
腕もあるがマリウスの使う剣は魔法の力を帯びていた。
巨石の様に軽い剣であるが持ち主には剣は羽根の様に軽く扱えるのだ。
簡単に言うと子供にでも扱えるくらい軽く、威力は絶大って反則の様な剣である。
剣は城ではなく王家の墓所に隠してあった為に無事だったのだ。
ギリアはマリウスの重く早い斬撃を柳の様に受け流して斬り返した。
「マリウス王、加勢致します。」
デュークはギリアに斬りかかっていった。
二刀を使った巧みな剣術である。
マリウスとデュークは息の合ったコンビネーションでギリアを圧倒していく。
マリウス王の善戦を目にしてカザン王は大声をあげて兵を鼓舞する。
「我らもマリウス王とローマシアの兵に負けるな!」
ミシワール兵も士気をあげてモーリス軍に突撃した。
「浮き足立つな、正面を厚くしろ!まだ兵の数はこちらが上だぞ。」
ジュノが兵を叱咤する。
モーリス軍が数の上で圧倒的に優位な状況に変わりはないのだ。
モーリス軍の兵が正面に集中した時、背後からドーラのいる本陣に百人程の兵が斬り込んだ。
それは、精鋭だけを絞り込んだ特務部隊隊長ローズ率いる一団であった。
その中には来人、シデン、ブリットの姿もあった。
正面のカザン王の率いる本隊を囮にして、モーリス軍の本陣を戦場を大きく迂回した兵が後方から叩く奇襲策であった。
「ドーラ、覚悟するにゃ!」
「おのれ、カザンめ小細工を!」