第69話 決戦にゃ1
モーリス島はランドール大陸の北に位置する島である。
一年のほとんどを寒く氷に閉ざされる過酷な土地に魔人達は生きていた。
そんな土地に黒龍が現れた。
魔人達は黒龍の支配の元、温暖で豊かな土地であるランドール大陸への進出を目指した。
しかし、その夢は叶わず、黒龍は、モーリスの地に封印され、その瘴気は、貧しく痩せた土地を更に蝕み魔物を大量に生み出す暗黒の地と変えた。
モーリスに住む、魔人達は金龍と大陸に住む全ての生き物を憎んでいた。
しかし、お互いに勢力争いを繰り返すだけで大陸に攻めてくることは無かった。
黒龍と魔人達の脅威は過去の伝説として忘れ去られようとする中、ローマシア王家に黒龍の力を封じた龍珠が伝えられているとの情報を得たゼノンと呼ばれる魔人の王がいた。
ローマシアはモーリス島の遥か南に位置し、その間に龍の棲む山アリストン、ドワーフの国マージェル、人の国ダリスがあった。
魔人王ゼノンは配下のドーラ、ジュノ、ギリアと魔物達をローマシアに送り込んだのであった。
「ドーラ、ジュノ、ギリア。お前たちはローマシアへ行け。どんな手段でも良い龍珠を手に入れるのだ。」
「かしこまりました。ゼノン王。我が身に変えましても龍珠を手に入れて帰ります。」
それから、10年、ローマシアは、魔人の手に落ちていた。
カザン王率いるミシワール国軍とドーラ率いるモーリス軍は国境を越えミシワール国内のザラン平原で対峙していた。
ミシワール国軍5千に対し、ドーラ達、モーリス軍はロジャー砦で更に兵を吸収し、総数1万を越える大群となっていた。
ミシワール国軍は、部隊をカザン王率いる本隊である騎馬隊1500、特務部隊1000、陸兵部隊2500の3つに分け、特務部隊を正面を陸兵部隊、続いて陸兵部隊、後方に本隊と逆Vの字となる魚鱗の陣に兵を配置していた。
対するモーリス軍は兵力の優位から兵を左右に広げ左右からミシワール軍を包み込むべくYの字となる鶴翼の陣に兵を配置していた。
ミシワール国軍の陣幕では、カザン王、ミーナ姫、マクレイ宰相、特務部隊ローズ隊長、特務部隊伝令ジョーンズ、陸戦部隊ビリー隊長、陸戦部隊伝令チャーリーそれに、妖精剣から、来人、シデン、ブリット、フィーネ4人が参加し、軍議が開かれていた。
「相手はローマシア軍ではなく、モーリス軍と称しており、ロジャー砦の兵を含めて約1万になります。人の兵の後ろに魔人と魔物が配置され、裏切れば背後から即攻撃されるようになっております。」
「く、卑怯な手を使う。あれでは、ミーナがローマシア兵に呼びかけても寝返ることは出来んぞ。」
陸戦部隊伝令チャーリーからの報告に陸戦部隊ビリー隊長が苦々しげに呟いた。
「カザン王、敵の数は、我が軍の倍、まともに戦って勝てませんぞ。」
「言われなくても分かっておる。マクレイよ。だから、こうして軍議を開いておるのではないか。」
「もう、敵の頭を取るしかないわね。陸戦部隊に至っては、数を揃えたにすぎないですものね。」
特務部隊隊長のローズが神妙に応えた。
「それしか、ないにゃ。」