第67話 魔人が動くにゃ
シェードは手勢である近衛騎士団を引き連れ、ローマシアの城から出陣しようと城門の前にいた。
その前に立ち塞がる様にミーナの姿をしたドーラがいた。
「シェード、何事です?兵を連れて何処に行くのです。」
「ドーラ、王と王妃が西の塔から連れ出された。我々は、賊の後を追いかける。」
「王と王妃が!」
近衛騎士団は魔人や魔物ではなかったが王と王妃を監禁している事情を知った上でシェードに従っていた。
魔人ではなく、あくまでシェード個人に従っているのである。
「逃げた先は、分かっているのですか?」
「ミシワールだ。」
「ミシワールですって?なぜ、戦争中のミシワールに。」
「元々、ミシワールと戦争になったのはお前たが画策した為だ。個人的には王同士は親しいからな。」
シェードは龍珠を持つミーナがミシワールにいる以上、こんなところ所でぐずぐずしている必要がなかったのである。
「俺は、近衛騎士団を率いて、賊の探索をしながらミシワールとの前線に向かう。お前は、後からゆっくり来るが良い。」
シェードはそこまで言うと馬にムチを当てた。
「我に続け!」
シェードと近衛騎士団はあっという間に城門から外に出るとミシワール方面に向けて走り去った。
「ふん、シェードめ!私を出し抜いて龍珠を手に入れようなんて甘いわ。」
呟くドーラの肩には闇の妖精ティアが腰掛けていた。
「ごめんね、シェード。私は、ドーラに付くことににしたの。」
「では、私達も龍珠を取りに行きましょう。」
いつの間にか、ドーラの背後には王と王妃に化けていたジュノともう一人の魔人が正体を現した状態で立っていた。
「今度こそ、猫耳の金髪をやってやる。」
ジュノの眼にはブリットへの復讐の炎が燃え上がっていた。
更に魔人達の背後には魔物の群れが溢れ、雄叫びを挙げていた。
西の塔からフクロウに掴まって城を脱出したデュークとマリウス王とエレナ王妃は、町外れの小高い丘の上に降り立った。
流石にロープにぶら下がっての移動は人にもフクロウにも限界があった。
丘にはデュークの部下達が馬を準備して待っていた。
「ここからは部下と一緒に馬でミドの村まで移動します。お二方共、大丈夫ですか?」
「心配するな、私もエレナも身体は鍛えている。」
「えぇ、私も大丈夫です。」
「少々、遠回りですが南から迂回し、ミシワール軍に合流します。」
デューク達は王と王妃を護衛しつつ、南へ向けて出発した。




