第55話 |一つ目鬼(サイクロプス)の宝にゃ
「本当にマジックアイテムの斧を俺がもらって良いのか?」
「当たり前じゃないの、色々お世話になったしね。どうせ、そんなでかい斧、ハイザールしか扱えないしね。」
キング一つ目鬼が残したマジックアイテムの斧は、ハイザールが受けとることとなった。
「それでは御主人様、遠慮なく頂かせてもらいます。」
ブリットは一際大きな魔素の結晶体に手をかざして吸収した。
ブリットの身体が一瞬、発光するとおさまる。
「御主人様、目からビームが使えるようになりました。同時に御主人様にも私が使用できる技がリンクし、使用できるようになりました。」
「目からビームだって。」
「そうです、キング一つ目鬼のこれです。」
ビッー、ボッ!
ブリットの眼からビームが出て足元の地面を焼く。
「これにゃ!」
ビッー、ボッ!
俺の眼からビームが出て足元の地面を焼く。
「キング一つ目鬼の様に眼球が大きくありませんので出力はあれ程、大きく出来ないようですが逆に使用してもその間眼が見えなくデメリットはなくなっています。」
「来人、猫になっているだけでなく、どんどん人間離れしていってるね。」
「ぐっ。」
フィーネの言葉に俺は言葉に詰まった。
確かにだんだん人間離れしていっているがにゃんこ騎士の段階で既に人間じゃないし、今更、眼からビームが出てもいいじゃないか、俺はポジティブに考えることにした。
「それより、俺の剣が折れてしまった方が問題だにゃ。接着剤でくっつけるのも無理があるにゃ。やっぱり代わりの剣が必要にゃ。」
「フィーネ、宝の部屋があったよ!」
エリスがキング一つ目鬼が現れた方から飛んでくると俺たちの頭の上を飛び回った。
「エリス、宝の部屋って何だにゃ?」
「一つ目鬼が集めたお宝だよ。鍵のかかってる部屋があったから多分、お宝の部屋だよ。」
「もしかしたら、折れた剣の変わりになるものが見つかるかもにゃ。」
俺達はエリスに案内され、キング一つ目鬼が現れた方に砦の中を進んで行った。
ホールの周辺は破壊されていたが、少し先に進むと破壊されていない通路に出た。
「この先の地下室だよ。」
エリスは俺たちを入口が鉄の扉で塞がれている地下室へ案内した。
「私じゃ開けることも出来ないからね。」
扉は鍵が掛かっていてびくともしない。
「キング一つ目鬼が鍵を持っていたかもしれないけど、あのメチャクチャになっている所を探すのは大変だよ。」
するとハイザールが扉の前に立ち、キング一つ目鬼が持っていた斧を振りかざした。
「開けばいいんだろ。」
そう言うとハイザールは、鉄の扉に斧を振り下ろした。
バキッ!
鉄の扉は蝶つがいごと吹き飛んだ。
「ちょっと、ハイザール。中のお宝まで粉々になるわよ。」
フィーネが真っ青な顔をして、ハイザールに抗議する。
「心配症だな。」
「あんたが雑なのよ。」
「とりあえず、入るか。」
「ちょっと待って、罠があるかもしれないから。」
「フィーネ、罠なんてないにゃ。宝かどうか分からないけど色々あるにゃ。」
「来人、あんたは、もう入ってるの。…もうしかたないわね。」
フィーネがあきれながら、地下室に入ると既に他の仲間は部屋の中で物色を始めていた。
「あんた達、いつの間に。」
フィーネも地下室の中を物色し始めた。
「ふー、ガラクタから何から全部まとめて放り込んでるのね。掘り出し物が有ればいいんだけどね。」
地下氏の中は、ガラクタが山積みとなっていた。
「とにかく、剣、剣、剣がいるにゃ。」
俺は、新しい剣を求めて、ガラクタの山をあさっていた。
「これは折れている。これは、さびている。これはでかすぎる。これは、…。」
基本、ガラクタばかりだった。所詮は、魔物だから、自分が使うもの意外、価値など分からず集めているようだった。そう、カラスの巣の中とか犬小屋の中みたいなものだ。
ふと、俺を呼んでいるような感覚にガラクタの中を見ると布にぐるぐるに巻かれたものを見つけた。大きさと重さからどうやら剣らしいものであったが布を解くとお札の様な物が張られた剣が出てきた。
剣は、柄の部分が銀色で刀身が黒い金属製の鞘に収められ、柄と鞘がお札の様なもので封印されていた。
「これは、何か呪い系の魔剣かにゃ?魔神の剣とか。」
でも、何となく俺を呼んでいるような気がする。
俺が剣の柄を握った時、張られていたお札がハラリと剥がれた。
「お札が剥がれにゃ。」
その瞬間、剣から強い魔力が放出された。
「やっぱり、魔剣にゃ!」