第51話 山小屋の番人にゃ
エリスの声に後ろを振り返った俺達の目の前に顔の真ん中に大きな目が一つある巨人が立っていた。
「一つ目鬼!」
俺達は完全にその存在に気付いていなかった。
一つ目鬼は、人の背丈程もある斧を振りかぶると俺達めがけて投げつけた。
ゴウッ!
風を切る凄まじい音と共に斧は回転さながら俺達に向かってきた。
不意をつかれた俺達にはとてもかわせるタイミングではなかった。
剣で受けようにも剣ごと真っ二つにする威力があった。
俺達が地面に身を伏せた瞬間、斧は俺達の目の前でスッと浮き上がり頭上を越えて飛んでいった。
ギャー
図上で大きな叫び声がして10メートルはある巨大なワシの様な鳥が落ちてきた。
一つ目鬼は俺達の方にゆっくりと歩いて来ると頭に手をやりいきなり外した。
それは覗き穴が一つ目の様に見える一つ目鬼に似た兜だった。
兜の下からはひげ面だかちゃんと目が二つある愛嬌のある笑顔が現れた。
「驚かせて悪かったな、ロック鳥を狙ってたんでな。」
俺達は唖然としてロック鳥と呼ばれた巨大な鳥とそれを一撃で落としたひげ面の巨人を交互に見た。
「俺はそこの山小屋を管理しているハイザールだ。50年ぶりのお客さんだ。まあ、ゆっくりと休んで行きな。」
俺達が一つ目鬼と思った巨人は実に気の良い山小屋の主人だった。
俺達はハイザールの山小屋で休ませてもらうことになった。
「ガッハッハッ!俺を一つ目鬼と思ったか。」
「ハイザールさんはいつからここに住んでるにゃ?」
「四百年位になるかな。この山を越える人も結構いてな。しかし、百年程前に一つ目鬼が東の山の頂きに砦を築いて住みついて、人を襲うようになってから人が通らなくなってな。」
巨人族は長命で数千年を生きるらしい。
「まぁ、ゆっくりとしてくれ。ロック鳥の肉は、格別だぞ。それに東に行くなら最後の晩餐かもしれんからな。」
「縁起でも無いことを言わないでくれにゃ。」
「しかし、一つ目鬼は、冗談抜きに強いぞ。俺も戦ったことがあるが俺よりずっと大きい上に5人いるからな。逃げるだけでやっとだったよ。近づかなければ襲ってこない。悪いことは言わない引き返しな。」
「でも、そういう訳にもいかないんだよね。それで、どうするつもりなの。皆は?」
「俺は一つ目鬼と戦ってみたいな。」
「シデンは『戦う』ね。デュークは?」
「もちろん、戻る訳にはいかないからな。」
「フィーネ姉、私は兄貴に賛成!」
「デュークとアリアも『戦う』ね。来人は?」
「うん、俺も戦うにゃ!それに名案があるんだにゃ!」
「ガッハッハッ!お前ら、一つ目鬼とやろうってのか。」
「フィーネ、珍しく積極的になってるね。」
エリスがフィーネの耳元でささやいた。
「エリス、内緒だよ。一つ目鬼は、たんまりお宝を溜め込んでいるらしいのよ。レアなお宝もあるかもよ。」
「えへへ、そんなことだと思った。」
「私達のパーティって結構慈善事業的な戦いが多いからたまに稼がないとね。」