第47話 関所を抜けるにゃ
俺はベットの上で朝を迎えたが結局縛られたままだった。
俺がまた暴走するかもしれないと用心のためにと解いてくれなかったのだ。
「来人、起きたか。」
「起きるも何も縛られたままじゃ、寝れなかったにゃ。」
シデンは俺のロープをほどくとぼやいた。
「また、猫化したらなまじ素早いばかりに捕まえるのが大変だからな。まあ、もう大丈夫だろう。」
「迷惑かけたみたいなんでしかたないにゃ。でも朝まで縛ったままはひどいにゃ。」
とりあえず、解いてもらったが一晩縛られていたため、身体中が痛んでいた。
しかし、一晩縛りぱなしって俺はよっぽどひどく暴れたのだろう。
「来人、やっと起きてきたのか?」
「デューク、起きたと言うか、やっと解放されたにゃ。」
「聞いたよ。激しく暴れたみたいだな。」
「俺自身は全く覚えて無いにゃ。」
「そうか、それで魔法は身に付いたのか?」
「かなりのパワーアップにゃ!」
「それは丁度良かった。実はこの砦に俺達の手配書が届いているらしい。」
「でも、町にはすんなり入れたわよ。」
「それが運が良いのか悪いのか昨日、届いたようだ。だから、町の門番は知らなかったという訳だ。」
「砦の関所を通るのも町を出て戻るにも必ず検問にかかることになるわね。」
「そうなる、後は俺達の変装が通用しなかったら最悪、戦いは避けられないな。」
「大丈夫、俺達の変装は完璧にゃ!」
「どこから、その自信が出てくるのよ。」
「にゃはは!」
俺は、パワーアップした自信からか戦いになっても何とかなると軽い気持ちでいた。なる様になるさ。
「それじゃ、覚悟を決めて行きましょう!」
俺達は準備を済ますと関所の受付へ向かった。
朝一番の関所はまだ誰も並んではいなかった。
「早いな。それじゃ、確認するから全員馬車から降りな。」
俺達はおとなしく馬車から降りた。
兵士が馬車を確認するがもちろん馬車の中に問題となるものは積んでいない。
「行き先はオクト村。魔物討伐へ行く冒険者だったな?」
「はい。」
デュークは返事だけした。こういう時は聞かれたこと以外喋らないことだ。ペラペラ喋る方が疑われる。
「そうか、俺も最近オクト村で魔物の被害が出ていると聞いている。」
デュークの情報収集の賜物である。
「中央ではミーナ姫に変装した連中が王の暗殺に城へ浸入したらしいがこっちには関係無いだろうしな。良し、お前ら通っていいぞ。門を開けろ!」
兵士は簡単に確認するだけで関所の門を開けた。彼らからすれば、ミシワール方面からの浸入を防ぐことの方が重要であった。
「すみません。」
俺達は、そそくさと馬車に乗り込むと馬車を怪しまれない様にゆっくりと進ませた。
そこに朝の巡視にメジナがカジキを連れて現れた。
門番の兵士はメジナに敬礼をした。
「異常ありません。冒険者の一団が通っただけであります。」
「そうか、ご苦労。冒険者の一団か。」
メジナが関所の門の方を見ると馬車が一台、門を抜けた所であった。
その時、突風が吹き、ミーナが被っていたフードがめくれ、顔が見えた。
「ミーナ姫…の偽物!」
メジナは、ロジャー砦に赴任する前、城務めであり、ミーナの顔を見たことがあったのだ。
「て、手配書の連中だ。何をしている、追え、捕まえろ!」
「やばい、ばれた、逃げるぞ。」
手綱を取っていたデュークは、馬に鞭を入れた。