第46話 暴走と覚醒にゃ
俺が雷神と戦っている間、宿屋の部屋では一騒動起こっていた。
「来人、大丈夫?」
突然、来人が魔法書から現れた雷神に電撃をくらって倒れてしまた。
フィーネ達は来人がこのまま死んでしまうのではないかと心配していたのだ。
「エリス、あの本が危ない物だったら、何でもっと早く言わないのよ。」
「ごめんなさい。来人が持っていたから表紙がよく見えなかったのよ。」
突然、来人は目を開くと猫の様に手を突いて四足で立った。
「来人、気が付いたの?」
「にゃー!」
「大丈夫か、来人。」
来人の身体は、電気を受けた影響か全身の毛を逆立てパリパリと放電をしながら白く発光していた。
「ふー、ふぎゃー!」
バリバリッ!
来人に触れようと手を伸ばしたシデンの顔を来人が引っかいた。
来人はまるで猫の様に部屋の中を走って逃げ回っていた。
「くそ、来人を捕まえろ。」
引っかかれた顔を押さえながら、シデンが来人を追いかける。
「ふぎゃー!」
「待て、来人!ブリットも見ていないで手伝ってくれ。」
「あなた方が追いかけるからですよ。大丈夫、ご主人様のことは心配ありません。」
「来人は大丈夫でも。来人に引っかかれる俺たちが大丈夫じゃない。」
バリバリッ!
「痛っー。やったわね、来人。」
今度は押さえつけようとしたアリアが引っかかれた。
「来人が…暴走モード突入。」
エリスがつぶやいた。
「ミーナ危ない。」
来人がミーナに向かって突進したのでフィーネが叫んだ。
ドカッ!
ミーナの直前で来人がフィーネの頭を蹴って方向を変えた。
「キャー、来人!人の頭を。」
「皆、来人を囲め、捕まえるんだ。」
シデンが何処からか出したでかい網を持って来人を追っかけまわしている。
「ふー、騒がしいことです。」
ブリットだけが他人事の様に冷静であった。
現実世界で混乱して猫化した俺が暴走していた時、精神世界の俺は力の限界を超え、新たな力を得ようとしていた。
俺は、全身の毛を逆立てて白く光を放つ状態となっていた。
瞬間移動の様に見えていた雷神の動きがはっきり見える。
俺は雷神に攻撃を仕掛けようとしたが雷神の姿が徐々に薄くなっていく。
『既に汝の中に我の力が宿っている。もはや、自由に使いこなせるであろう。』
そう言うと雷神の姿は完全に消えた。
同時に俺は目を覚ました。
気が付いた俺は何故かグルグルに身体をロープで縛られ床に転がされていた。
周りには引っかき傷と痣だらけになり座り込んでいるシデン、フィーネ、アリアの3人がいた。
ブリットは涼しい顔で椅子に座って紅茶を飲んでいる。
「どうなってるんにゃ、何で縛られているにゃ?」
「しばらく、その格好で反省するんだな。」
「反省って、俺、何かしたかにゃ。」
「思い出すまでそのままでいなさいよ。この暴れ猫。」
俺が何をしたって言うんだよ。