第43話 ロジャー砦にゃ
男の名前はメジナといった。
文官でありながらこのロジャー砦の責任者まで登り詰めたのはローマシア軍でも異例のことであった。
彼を出世させたのは上司へのごますりと賄賂であったがその取り入りかたは既に特殊能力と言えるほど見事であった。
今、ロジャー砦の責任者となり身近に取り入るべき上司がいなくなったメジナはその本性を現しやりたい放題の暴君になっていた。
つまり、とっても嫌な奴である。
今、メジナは、食事の最中だった。
メジナは食事を人生で最も大切なものだと考えており食事を邪魔されることを嫌った。
その時、部下の1人がメジナの執務室に入ってきた。
「メジナ様、中央部から早馬で通達文が届きましたがいかがいたしましょうか?」
「君、今私が何をしているか分かりますか?」
「あっ、申し訳ありませんお食事中でしたか気付きませんで。」
「私は食事の邪魔をされるのが一番嫌いなんです。カジキ。」
メジナは自分の後ろに控えていたゴリラ顔の大男に声をかけた。
カジキと呼ばれた大男は部下から通達文を引ったくると部下を抱え上げ、執務室の開いた窓から部屋の外放り出した。
「カジキ!」
あーっ、ドボン!
メジナが慌てて窓から外を見ると部下が部屋の窓の下にある池から這い上がるところだった。
「まあ、良い。それは後で見るからその辺に置いておけ。」
そうは、言ったがメジナは、食事を中断して書類に目を通した。
「手配書か。」
『ミーナ姫に化けて王と王妃の暗殺を計った極悪人につき発見次第、処刑すること』
と書かれた手配書は、来人達の手配書だった。
そのメジナのいるロジャー砦に併設する町に一台の馬車が入ってきた。
来人達の乗った馬車である。
「お前達、この先はミシワールとの前線になるのだが何をしに行くんだ。」
「戦争で荒れた土地に魔物が多く発生しているんで魔物退治の手が足りないって聞いてね。」
関所の兵と話しているのはフィーネだ。
「その話は聞いているがお前達も物好きだな、対した金にならないだろうに。」
「それが仕方ないんだよね。知り合いに頼まれたからね。」
「そうか、それでは仕方ないな。町に入りな。関所はもう閉まったから今日は宿でも泊まって明日出直しな。」
「ありがとう兵隊さん。」
馬車は門番の兵士が開けた門を通り町へと入って行った。
「流石、フィーネ姉。男の扱いがうまいね。」
いつの間にかアリアはフィーネのことをフィーネ姉と呼ぶ様になっていた。
「アリアも直ぐに出来るようになるよ。」
ことがすんなり運ぶのは良いが男の俺としては複雑な気分である。
「私も女子力上げるんだ。」
アリア、それは女子力じゃあないぞ。