第35話 玉座の間の攻防にゃ1
俺達が抜け道の出口にたどり着くまでに大岩2回、モンスタールーム1回、ワニの池1回、落とし穴2回他、数々のトラップを乗り越えた。
もちろん、俺がトラップに引っ掛かったのは最初の1回だけで後はどじっ子のスキルを発揮したミーナ姫がことごとく、わざとかと突っ込みたくなる位に引っ掛かってくれた。
とにかく俺達は予定通り抜け道の出口である玉座の裏の隠し扉の前にたどり着いた。
玉座の間に人の気配は無い。
カタン
玉座の後ろ足元部分の板が外れ人が通れる穴が現れた。
「良し、誰もいないぞ。」
俺達はデュークを先頭に次々と玉座の間への侵入した。
「全員、物かげに身を隠して奴らを待つんだ。ミーナ姫は、真実の鏡を持って玉座の下で待機して下さい。後は、手はず通りに。」
「分かりました。」
俺達が身を隠して待っていると玉座の間の大扉が重々しい音をたてて開き、2人の人影が現れた。
王冠を被った30代後半の男性と上品な緑色のドレスを身に着けた30代後半の女性、王と王妃である。
「お父様、お母様!」
ミーナが2人の前に飛び出した。
「どうしたんですか?」
王妃がミーナに尋ねた。
「お二人ともご無事なのですか?」
「何を言っているのだ、何かの冗談か?」
王が問い返す。
「お父様、お城にいた私は偽者なのです。近衛騎士団団長のシェードもその仲間なのです。」
ミーナの言葉を聞いたは2人は顔色を変えた。
俺達は姿を現すタイミングを失っていた。
予想では、王と王妃は姫に化けたドーラに魔法をかけられ操られていると思っていたのだが目の前にいる2人にその様子はない。
そこまでミーナが話した段階で取り敢えず俺達は姿を現した。
「王様、ミーナ姫の言っていることは本当です。」
デュークが王に訴えた。
「何だお前達は?どうやって城に忍びこんだのだ。」
「王様、お忘れですか?諜報部のデュークです。」
その時、玉座の間の扉が再び開き、ミーナの姿をしたドーラとシェードが現れた。
「何だ、お前達は?」
ミーナが真実の鏡を手にドーラとシェードの前に立ち塞がった。
「お父様、お母様、このミーナとシェードは偽者です。今、証拠をお見せしますわ!」
ミーナは、真実の鏡を両手にドーラとシェードに掲げた。
「そ、それは!」
鏡に写し出されたドーラは、その正体を現した。
ドーラは、紫色の髪をし、額に二本の角を生やした妖艶な美女へと姿を変えた。
「あの可愛いらしい姿も気に入ってたんだけどね。」
しかし、正体のばれたドーラは、余裕の表情だった。
「魔人だわ!お父様、お母様。」
ミーナの声に王が平然と答えた。
「それがどうしたと言うのだ。」
「お父様、どうしたの?」
「だから、それがどうしたと言うのだ。」
「お父様!」
王様と王妃の額の真ん中に角が生え、その姿は魔人へと変わっていった。
「イヤー!」
ミーナが悲鳴をあげる。
「王も王妃もここにはいない。」
唯一、人の姿のシェードが呟いた。
「この男は賢い奴だよ。王と王妃が入れ替わった直後にそれに気付いて我らに忠誠を誓ってきたからね。」
ドーラがシェードを指して言った。
「シェード、何故なの?」
ミーナの問いにシェードは答えず剣を抜いた。