第34話 王家の抜け道にゃ
俺、エリス、シデン、フィーネ、デューク、ミーナは、城塞都市リーンから少し離れた小高い丘の上にいた。
丘の頂上に直径3メートルはある大きな岩があった。
「皆さん、抜け道の出入り口はここです。」
「この岩にゃのか?」
「そうです。」
「この岩を除けるのはちょっと大変だぞ。この人数では持ち上げることは不可能だ。」
「大丈夫です。動かす必要はありません。」
そう言うとミーナは、右手にはめた指輪を岩に向けた。
「我はローマシア王家の血筋、名はミーナ。古の封印を解き、我に道を開かん。」
ミーナが唱えると同時に岩が真ん中できれいに二つに分かれ、石壁で出来た縦横2メートル程の大きさの入口が現れた。
「さあ、行きましょう。」
ミーナの言葉に従い、俺たちは通路の中へと入っていった。
通路の出入り口は縦横2メートル程の大きさであったが内部は縦横5メートル程のかなり大きな通路となっていた。
原理は分からないが床や壁がほんのり光り通路内部を照らしていた。
「この通路は金龍ナーガが黒龍と戦った時代のものです。王家の者しか出入口の封印を解けないのでしばらく手入れがされておりませんから気をつけて下さい。」
エリスの言葉と裏腹、通路は今、出来立てと言って良い程の状態であった。
「古い時代のものって言ってだけど全く傷んでないね。」
フィーネが感心して呟いた。
「私も実際に通るのは初めてなんです。ただ、城から脱出するときに使うものなのでトラップも有りますから気を付けて下さい。」
「ミーナ、トラップがあるんにゃら先に言って欲しいにゃ…。」
俺が何気に触れた壁の一部がガタンとスイッチの様に引っ込んだ。
全員の視線が俺に集中した。
ガタン、キリキリ!
どこかで何かカラクリが動く様な音がした。
バクン!
俺達の後方の天井が大きく開いた。嫌な予感がする。
ドスン!
思った通り丸い巨大な岩が落ちてきた。
「お約束にゃー!」
ゴロゴロゴロゴロ!
岩が俺達の方に転がって来る。岩は、ピッタリ通路の大きさで隙間はなかった。
「皆、走れ!」
皆が一斉に走り出した。
巨大な岩は、かなりの速度で転がって来る。
「来人、何やってるの!」
フィーネの非難の声が聞こえる。
「こんな所でボケはいらん。来人、何とかしろ!」
シデンの非難の声が聞こえる。
俺も決してボケキャラではないし、このままでは皆、押し潰されてしまう。
俺は、いきなり、反転して走りだすと剣を抜き、魔法の炎をまとった。
「にゃんこローリングファイアー!」
俺は、回転しながら岩に体当りをした。
ドカーン!!
凄まじい音と共に岩は、粉々に砕け散った。
どや顔で立っていた俺に浴びせられたのは皆の非難の声だった。
「外にどんなトラップがあるんだにゃ?」
俺は、涙目になりながらミーナに尋ねた。
「ごめんなさい、実は分かりませんの。」
「えっ!」
「本当なら正しい道順にしたがっていればトラップは、発動しないのですがまだお父様から教わってなくて…。」
皆が絶句した。




