第29話 アイアンゴーレムと戦うにゃ
俺の目の前には高さ5メートルのアイアンゴーレムが立っていた。
前回戦ったロックゴーレムより一回り大きく手足も太く頑丈そうだ。
倉庫の中はかなり広かったがそれでも追たら逃げ場はない。
「今度は前の様にはいかんよ。このアイアンゴーレム鉄男くんの敵では無いのだよ!ハッハッハ!」
オーランは、自慢気に言うと笑った。
確かに前回のロックゴーレムとは違う威圧感が漂っている。
俺はファイアソードを発動し剣に炎をまとわせるとアイアンゴーレムに斬りかかった。
ガキーン!
俺の攻撃はアイアンゴーレムの胸の装甲に傷を付けただけで阻まれた。
「このアイアンゴーレム鉄男くんの強力装甲に傷を付けるとは流石と誉めておこう。」
オーランが勝ち誇った様に言った。
確かに今回のアイアンゴーレムの装甲はかなり強力になっている。
こいつを俺一人で倒す方法が思い浮かばない。
「今度は、こっちがいかせてもらうぞ。」
アイアンゴーレムは両腕を振り上げ俺めがけて降り下ろした。
ドカン!
速い、俺は間一髪で床を転がって攻撃をかわしたが。
しかし倉庫の床に大きな穴が開いた。
スピードもパワーもロックゴーレムの時の数段上だ。
このまま、逃げまわっていたら床に寝かされている女の子に被害が及ぶ恐れがあった。
「ファイアボール!」
俺は右手で火の玉を作りアイアンゴーレムの顔面にぶつけた。
アイアンゴーレムの顔に炎が上がる。
時間差で左手で作った炎の玉を倉庫の出入口のドアにぶつけた。
炎が上がりドアが吹き飛んだ。
俺は女の子を抱えあげると吹き飛ばした倉庫の出入口から外に飛び出した。
続けてアイアンゴーレムが倉庫の壁を粉砕しつつ俺を追ってくる。
もう洒落にならない迫力だ。
「くそっ!あいつを倒す方法を考えている暇がないにゃ。」
俺はアイアンゴーレムの入れない狭い路地を選んで逃げたがアイアンゴーレムは路地の両側の壁を削りながら無理やり進んでくる。
「このアイアンゴーレム鉄男くんからは逃げられ無いのだよ。」
「うわぁ、もうむちゃくちゃにゃ!」
「装甲を鉄に変え防御力を上げたニュータイプのゴーレムに私が直接乗り込んでいるのだ。猫ごときに遅れを取るものか。」
「直接乗り込む…っ!」
ハッ!
「良いこと、思い付いたにゃ!エリス、あのおっさんのゴーレムを足止め出来ないかにゃ?」
「ちょっとなら出来るよ。」
「少しでも良いから頼むにゃ!エリス」
「分かった。出てこい私の友達、土の精霊ノームのノンちゃん♪」
地面が光りオレンジ色の肌で赤い三角帽子をかぶった小さな男の子が現れた。
『やぁ、エリス!おいらに用かい!』
「ノンちゃん、あのゴーレムを足止めして!」
『任せてよ!』
ノンちゃんはそう言うと吸い込まれるように地面に消えた。
突然、アイアンゴーレムの歩みが止まった。
「な、何事だ。」
オーランがうろたえる。
アイアンゴーレムの足元が泥沼に変わり、沈み込んでいく。
「ノンちゃん、頼りになるにゃ。」
俺は身動きの取れなくなったアイアンゴーレムにファイアーボールをぶつけた。
「何をするのかと思えば、またそれか。その程度の炎、効かんよ。」
「それはどうかにゃ。」
俺は、次から次へ両手をファイヤーボールを作るとアイアンゴーレムにぶつけていった。
ド、ド、ドドドドドッ!
連続して、ファイヤーボールをぶつけられたアイアンゴーレムが炎に包まれ、炎の柱となった。
アイアンゴーレムの装甲が炎の熱で赤く変わる。
「俺のファイアーボールの威力ではアイアンゴーレムの装甲を破壊することが出来ないかもしれないにゃ。でも、熱く焼けたアイアンゴーレムの中はどうかにゃ。」
「何を言う。この程度の炎の熱、内部まで届くわけがないだろう。」
そう言ったオーランの声はかなり動揺して震えていた。
「それじゃあ、もっと熱くしてみるにゃ。」
俺は、更にファイアーボールをぶつけ続けた。
「ひぃー、熱い。」
オーランは悲鳴を上げて、アイアンゴーレムの中から飛び出してきた。
飛び出す瞬間にオーランのズボンに火が着いた。
「熱、熱っ。」
オーランは地面を転げまわりズボンの火を消した。
「やあ、おっさん。わざわざ、降りてきたのかい。」
我に返ったオーランは真っ青な顔をした。
ゴーレム使いオーランからゴーレムを取ると普通の人より弱い位なのである。
「ひぃー、ごめんなさい。許して」
「残念、だめだにゃ。」
俺の右ストレートがオーランの顔面に入り、オーランは気絶した。