第271話 残された者たち
鞍馬山の紗那王の屋敷に俺達は移動した。
山の奥に建てられた屋敷の30畳はある大広間には俺の他に屋敷の主の紗那王、からす天狗の翔、カミキリの晃、ブリット、こにゃこ、茜、武御雷、晴明そしてなぜかぬらりひょんのセイがいた。
「あの何でこいつまでここにいるのにゃん?」
こにゃこがセイを指して言った。
「それは私が話そう。」
突然、部屋の襖を開けて入って来たのは零課の輝夜であった。
「やっと着いたか輝夜、久しぶりじゃな。」
「30年ぶりか紗那王。今回はうちの晴明が迷惑かけたようだな。」
「何、大したことはしておらんよ。」
「セイよ。お主も悪魔風情に操られおって恥を知れ!」
「輝夜殿、返す言葉もない。」
「ばあさん、ぬらりひょんの知り合いか?」
「誰がばあさんだ、晴明!」
ゴン!
輝夜が晴明の頭にげんこつを落とす。
「くそ婆が……」
晴明が小声で呟く。
ゴン!
「聞こえておるわ!」
「婆と孫でじゃれあうのは後にするのにゃ……」
俺の呟きに輝夜と晴明が 同時に俺を睨む。
ゴン、ゴン!
俺の頭に2つのげんこつが落ちてきた。
「御主人様は一言多いのですよ。」
「分かってるんだけどついにゃ。」
「武御雷とやら、輝夜は先程の話をまだ聞いておらん。悪いがもう一度、詳しく話を聞かせてもらえるか。」
紗那王が武御雷に話を振った。
「分かったでござる。我々の世界で15年前に来人殿が旅立たれた後、国々の間で争い事もなく、危険な魔物も現れることが無くなり平和な時が流れておったでござる。」
武御雷は静かに語り始めた。
来人達が異世界に戻ってから半年後、アリストン山の山頂においてミシワール国のカザン王、ローマシア国のマリウス王、マジリア国のマリーダ女王、ダリス国のアーク王、フェリシア国のグミライトライム首席が集結し、女神フェリシアと金龍ナーガの面前で平和宣言を行った。
ちなみに神聖国フェリシアはグミライトライムが女王を退位し、君主制の国家から民主性の共和国と変った。たり共和国となった。民主制となったものの選挙により再グミライトライムが国家の代表となった。
黒龍の呪いによ不毛の地であったモーリス島も黒龍が滅せられたことにより呪いが解けて作物が育つよう様になっていった。
魔物の発生も日に日に減少し、人々は平和な日常に戦いを忘れていった。
平和になり戦いを忘れて10年が過ぎた頃、各国は次々と軍縮を行い結果、軍は形骸化し張子のトラと化していた。
そんなある日、アリストン山の上空に巨大な島が現れた。岩盤の上に城が設けられた島は、ガリバー旅行記にある浮遊都市の様にであった。