第27話 袋の中身にゃ
黒い大きな袋を担いだ男は路地から路地へと隠れる様に走っていた。
エリスは男の斜め後方を飛びながら追跡していた。
時折、男は後ろを気にしていたが上空を飛ぶ身体の小さなエリスの追跡に全く気付いていなかった。
男は町の外壁近くの古い倉庫に入って行った。
「ここがアジトね。取り敢えず、来人に連絡しないとね。」
エリスは呪文を唱和して風の精霊シルフィーを呼び出した。
「じゃあ、私は見張ってるから、来人を呼んで来てね。頼んだよ、シーちゃん♪」
『ラジャー、エリスちゃん♪』
シルフィは空高く舞い上がると来人の元へ飛んで行った。
「これで良し!」
エリスは倉庫の周囲を注意深く飛んで確認した。
倉庫の入口は男が入った一ヵ所だけだったが屋根に明かり取りの天窓があった。
エリスは注意して天窓から倉庫の中を伺った。
天窓の真下の壁際の床に縛られ猿ぐつわをされた女の子と思われる人影があった。
その足元には黒い大きな袋が無造作に置かれていた。
良く見ると女の子の胸が上下に動いており生きていることがわかった。
あの袋に入れられていたのはあの女の子だったのか。
エリスにも何となく予想は出来ていた。
事情はともかくあの女の子は拐われてきたのだろう。
倉庫の中はランプの灯りに照らされており、倉庫の中央には木で作った粗末なテーブルとイスが置いていた。
先程入って行った男ともう1人男がテーブルを挟んで向かい合うように座っている。
エリスは倉庫の中にいた男の顔に見覚えがあった。
「あのおっさん、どっかで見たことあるような……闇ギルドのゴーレム使いのおっさんだ!」
リーンまでの道中に襲いかかってきた闇ギルドの2人組の内の1人、ゴーレム使いのオーランだったのだ。