第267話 妖樹王
次々と地面からわいてくるダークニャーダーに俺はやっと分かった。
「本体は地面の下にゃ!」
今まで現れていたダークニャーダーは分身の一体でそれは本体からすると細胞の一つに過ぎなかった。
そしてそれはとうとうその正体を現した。地面が大きく割け現れたのは巨大な球根だった。
「我は妖樹王キプラなり!」
キプラと名乗った巨大な球根の大きさは直径が百メートルを超えており、太い根がタコの足の様にうねうねと動いている。山の様になった球根の天辺には沢山の実や花を付けた巨木が天に向かって伸びている。
「こいつがダークニャーダーの正体だったにゃんて!でか過ぎにゃ!」
ビキッ!
球根に亀裂が縦に走りそこに現れたのは巨大な眼だった。
『御主人様あの眼を攻撃してみましょう。』
「そうだにゃ!でかい眼は弱点ってのは定番にゃ!」
俺はキプラの正面に建つ高層ビルを駆け上った。地上31階、高さ150メートル、ビルの屋上に登るとキプラの眼を見下ろす位置である。
俺は両手に持った槍を頭上で連結して一本の槍にするとキプラの眼を目掛けて勢いよくジャンプした。
「天帝の槍を喰らうにゃ!」
俺は落下の勢いを加えた槍をキプラの眼に投げつけた。
勢い良く槍は稲妻の様に放電しながら飛んでいき眼の真ん中に突き刺さった。
「ぐおー!」
キプラが地鳴りの様な悲鳴をあげる。
「やったにゃ、やっぱり弱点だったにゃ!」
俺は落下の途中でビルの窓に手を掛けてしがみつくとキプラの様子をかくにんした。
キプラの眼に大量の水が溢れ出す。同時に瞬きをするかのごとく何度も眼を開けたり閉じたりを繰り返した。
パキッ!
ガシャーン!
乾いた音と共にキプラの眼に刺さっていた俺の槍が弾き返され俺の掴まったビルの窓を割りコンクリート柱に突き刺さった。
「どうなってるにゃ!」
「眼が弱点だとそんな安易な弱点な訳無いだろ。ごみが入った位にしか感じんわ!」
どこが口かなのか分からないがキプラの声が響く。同時にキプラの眼に光の粒子が集まる。
「甘いぞ、熱視線!」
カッ!
眩しい光と共にキプラの眼から赤い熱線が放たれた!
「ヤバイにゃ、神速!」
俺はビルに掴まった手を離し一気に地面にかけ降りた。
ドーン!
ビルの俺が掴まっていた場所に大きな穴が空いていた。直径20メートル程がまるで蒸発した様に消えていた。
『御主人様今のを直撃した場合、深刻なダメージを受けるおそれがあります。』
「それは分かってるにゃ。」
『第2射来ます!』
カッ!
ドーン!
今度は地面に大きな穴が開いた。辛うじて第2射を避けた俺は雑貨屋に頭から突っ込んでいた。