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第262話 ズラ男

 周囲を覆っていた結界は鞍馬山の大天狗の妖力によって開けられた大きな穴からカラス天狗のしょうを先頭に大天狗の軍勢がなだれ込んで行く。

 それに対するぬらりひょん側は妖樹の種により産み出された付喪神の進化した妖怪達であったが数だけで大天狗側の10倍はある大群である。

 物々しい怒声が響き、双方の軍勢はぶつかり合い壮絶な戦いが始まった。

 大天狗の軍勢はからす天狗だけでなくさまざまな妖怪で構成されており、その中にかみきりのあきらの姿があった。

 あきらは愛用の大バサミを振り回し次々と敵の妖怪を切り伏せていく。

「所詮は出来損ないね。数だけで対した事ないわ。」

ガキーン!

 あきらの大バサミを頭部で受け止めたのは一見してサラリーマンにしか見えないスーツ姿て太った中年男だった。

「お前はかみきりだな。」

「私のハサミが髪の毛で止められたなんて!」

「俺は切る髪すらない男達が己のプライドを守るための防具として使っていた擬似頭髪ヘアピースの化身黒髪男くろかみおとこだ。」

「ヅラ……」

「ヅラじゃない!擬似頭髪ヘアピースだ。髪の薄い者の苦悩は好きな様に髪を切っているお前には絶対に分からん。どんな雨にも風にも負けない最強の擬似頭髪ヘアピースとして生まれ変わった俺の毛はそんなハサミ程度では切ることは出来んぞ!」

「それは既にかつらと言うよりヘルメットじゃあ……」

 事実、黒髪男くろかみおとこの頭部は髪というより超合金製の鉄兜のようであった。

「ヘルメットじゃない。擬似頭髪ヘアピースだ。」

「まあ、私的にはズラでもヘルメットでも何でもどうでもいいんだけどね。」

 そう言うとあきらは大バサミで黒髪男くろかみおとこのスーツ姿の胴体に斬り付けた。

スカッ!

 確かにハサミは黒髪男くろかみおとこを斬ったがまるで中身の無い布だけを斬ったような軽い手応えしか感じられない。

「えっ!」

ガコン!

 その時、あきらの頭に黒髪男くろかみおとこの頭突きが炸裂した。

 凄まじい衝撃に足がふらつく。

 再度、襲い掛かる黒髪男くろかみおとこの頭突きを寸前でかわしたあきらが目にしたのは斬ったはずのスーツが全く無傷の黒髪男くろかみおとこであった。

「外したはずはないわ。だけど何で斬れて無いの?と言うか手応えさえ全く無いのは何故?」

 ふらつく頭であきらはつぶやいていた。

「最強の擬似頭髪ヘアピースと言っただろ!」

 太った中年サラリーマンが直立した姿でロケットの様に飛び頭突きをしてくる。

 あきらはまだ足元がふらついており避けることが出来ない。

「はっはッは、喰らえ!」

 黒髪男が高笑いしながらあきらに迫る。

ガキーン!

 激しい金属音が響きわたる。

 黒髪男の攻撃はあきらには届いてはいなかった。

あきら!こんな雑魚を相手に出来ないならさっさと帰るんだな。」

 黒髪男の頭突きをカラス天狗のしょうが刀で受け止めていた。

「何だ!お前は邪魔をするな!」

しょう!さっきはちょっと面食らったけどもう大丈夫。私だけで十分だから手を出さないで!」

「ふん、お前の相手はあきらがするそうだ。俺はもう邪魔はしない。好きにしろ!」

 しょうは黒髪男を突き放し距離を取り、他の妖怪を相手にするために飛び去った。

「くそ、馬鹿にしやがって!かみきり、お前をやっつけたら次はあのカラス天狗だ。喰らえ、ロケット頭突き!」

 黒髪男は再度直立した姿でロケットの様に飛び頭突きをしてきた。

 あきらは素早く身をかわしハサミで黒髪男の胴体を斬りつけた。

 先程と同じように手応えが無くあきらの攻撃は黒髪男にダメージを与えることができない。

「どうした!お前の攻撃など効かんぞ。」

 しかしあきらは黒髪男に手招きをすると口元に笑みを浮かべなkがら言った。

「ズラ男。いいからもう一度掛かっておいで。」

「きーっ、ふざけるなー!喰らえ喰らえ食らえ!ロケーット頭突き!」

 黒髪男は直立した姿でロケットの様に飛び、今度は空高く飛び上がると落下の速度を乗せて真っ逆さまに晶目掛けて落ちてきた。

ズドーン!

 晶が黒髪男の頭突きが当たる直前で身をかわしたため黒髪男は地面に頭から衝突し大地にめり込んでしまった。

「しまった!」

「ここ!」

 あきらは素早く飛びかかると体重を乗せてはさみを逆さに地面から足を出している黒髪男の顎から頭にかけて突き刺したのである。

「ギャー!」

 黒髪男の身体が消え、あきらのはさみの先に内側から貫かれた古ぼけたかつら突き刺さっていた。

「最初からかつらって言っていたもんね。外からの攻撃にには強くても直接頭皮に当たる内側は柔らか素材であるのがかつらだからね。まあ、色々自分のことを喋ったのがあんたの敗因でしょうね。」

 あきらははさみを振り、かつらを打ち捨てると次の敵を求めて妖怪の中に突っ込んで行った。

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