第261話 増援
空は無数とも言えるほどの妖怪の大群に埋め尽くされ、辺りはまるでや夜の様に闇に包まれていた。
その妖怪の大群の中で時折、妖怪の大群を凪ぎ払うように稲光が走る。
稲光の正体はブリットの放つ雷撃の光であった。
大小のさまざまな姿の妖怪達はブリットと戦鬼を遠巻きに取り囲んでいる。
ブリットは既に何百の妖怪を消し炭へと変えたか分からなくなっていた。
「幾ら倒しても次々と湧いてきやがる。」
「おや戦鬼さんはお疲れになりましたか?」
「うるさい、猫耳!これ位で疲れるものか。それに私の名は呉葉だ。」
「はいはい、呉葉ですね。分かりました。それでは私のこともブリットと呼んでもらえますかね。」
「ブリットだな。それではそろそろ休憩は終わりにして掃除の続きを始めようか!」
「そうですね。」
『……ット…ブリット。聞こえるにゃか?』
突然ブリットの頭に来人からの声(通信・テレパシー)が響いた。
『御主人様、聞こえております。何でしょうか?』
『ブリット。いやー何だにゃ。こっちの敵がちょっと強くてにゃ。手伝って欲しいだけどこっちに来れそうにゃ?』
『こっちも数が多いので少し時間が掛かりそうですが。』
『分かったにゃ。でも出来るだけ早く頼むにゃ。出来れば俺がやられる前にしてもらえると助かるのにゃ。』
『了解です。御主人様。』
「ゲゲゲゲッ!」
その時、下品なしわがれた笑い声と共にブリット達を遠巻きに取り囲んでいた妖怪の輪が崩れ、ひと際大きなワニに鳥の翼をつけたような妖怪が現れた。
「ゲゲゲゲッ。たった二匹相手に何をやっている。こんな奴、俺が喰ってやる。」
「うるさいぞ。今、念話中なんだから、少し気を使え!」
「はあ、ってふざけるな!猫耳、お前から喰ってやる。」
『御主人様ちょっと邪魔が入りましたから一旦切りますね。』
『分かったにゃ。頼むにゃよ。』
「おい、聞いているのか猫耳!」
「うるさいと言っているだろ!」
ブリットが右手をワニ鳥に向けた時、上空から晴明の結界を突き破って沢山の黒い影がワニ鳥と他の妖怪達に降りかかった。
ザン!
ブリットの目の前で黒い影がワニ鳥に真っ二つに切り裂き、ワニ鳥は真っ逆さまに地面へと落ちていった。
「随分、てこずっているようだな。」
「お前はからす天狗。何でお前がここに?」
ブリット達の目の前に現れたのはからす天狗の翔であった。
「俺達の親方さまが新参者のえせ妖怪に縄張りを荒らされたって怒ってね。」
「お前達の親方ってことは鞍馬山の大天狗か。大天狗が私達を助けるのか。」
「別にあんた達を助けに来たわけじゃない。だがこいつらえせ妖怪にでかい顔して東京を蹂躙されるのは俺達のプライドが許さない。後は俺達で片付ける。お前達はさっさと自分の御主人の加勢に行くんだな。」
ブリットと呉葉にとって思わぬサプライズであった。