第26話 誘拐事件にゃ
俺とエリスが図書館から出ると既に日も暮れて暗くなった通りは人通りもまばらであった。
首都の街らしくガス灯が通りを照らしていたが俺の知っている道路照明の明るさとは雲泥の差でぼんやりと足元を照らす程度の明るさでしかなかった。
「もう、真っ暗ね。」
「遅くなったにゃ。」
しかし、俺のにゃんこ目は暗闇もばっちり見えるので全く気にならない。
こんな時はにゃんこで便利だと思う。
俺は宿まで近道をしようと薄暗い路地を曲がると前方から黒尽くめの2人の男が走ってくるのが見えた。
男達は周囲が薄暗い為か俺が猫足で足音を立てないためか分からないが俺のことに気付いていない様子だった。
男達は俺に気付き驚いた様子で立ち止まった。
2人の男のうち、体格が良い方の男が肩に黒い大きな袋を担いでいた。
男達は俺が無反応だったことから意を決した様に俺の脇をすり抜けようと走りだした。
男達が俺の脇を走り抜けた時、俺のにゃんこ鼻に男達と違う臭いに気付いた。
女の臭いだ。
同時に男の担いでいる袋から微かなうめき声が聞こえた。
「ちょっと、待つにゃ!」
俺が声をかけると同時に袋を担いでいない方の男が振り返り剣を抜いた。
袋を担いだ男はそのまま振り替えることなく走り去る。
「エリス、袋を担いだ男を追うにゃ!」
「来人、任せて頂戴!」
エリスは俺の頭から飛び立つと袋を担いだ男を追って行った。
俺は剣を抜くと男の攻撃に備えた。
俺は男の動きに違和感を感じていた。
男の目は虚ろで更に動きが何か機械的であった。
いきなり男は俺に斬りかかってきた。
どう見ても鍛えて無さそうな身体からは考えられないスピードで打ち込んでくる。
男の身体からは骨と筋肉が軋む嫌な音が聞こえる。
男の動きは速く打ち込みは重かった。
しかし、機械的な動き故に容易く読むことが出来た。
ドスッ!
俺は男の打ち込みをかわすと同時に左ストレートを男のみぞおちに打ち込んだ。
男は声もあげずにその場に倒れた。
俺は男を縛りあげるともう1人の男を追って走り出した。