第237話 接戦
コースはまもなく直線コースを抜け、カーブの多い区間に差し掛かった。
直線の終わりに大きく左に曲がった急なカーブとなっている。
俺と朧車のリンとブリットは横並びでカーブに近づいていた。
先にブレーキを掛けた方が相手に頭を押さえられてしまう。
インコースの朧車のリンはブレーキを掛けずに車体を路面すれすれに倒してカーブを抜けていった。
キン!
朧車のリンのコース取りは全くの隙間もないインコースを取っており、車体は限界まで倒され膝が路面を擦っていただけでなく、頭が時折ガードレールに接触していた。
実際、足で走っている俺は車体を倒すような真似は出来ずアウトに膨らんでしまった。
問題はブリットであった。
「ブリット無理するにゃ、補助輪付けてこのカーブは曲がれないにゃ!」
「問題無しです!」
ブリットは速度を全く落とさずカーブを直角に曲がっていった。
良く見るとタイヤが路面に接地していない。
ブリットは結局自転車に乗れなくて飛んで乗っているように見せかけていたのだ。
「ブリット、ナイスにゃ!」
先頭は朧車のリン、続けてブリット、俺は最下位となっていた。
レースは終盤となり山岳コースに急勾配の登りに入っていた。
「まずいにゃ。リンの奴はこのコースを知り尽くしているにゃ。ブリットも自転車に乗っているかの様に飛んでるからイマイチいつもの切れが無いし、俺は俺でハンドル持って前輪を転がしているからおもいっきり走れないにゃ。このままではあいつの手下にされてしまうにゃ。」
実は勝負をする上で俺達が勝ったらリンが復讐を止める代わりに負けたときは手下になると約束してしまっていた。
「妖怪の手下は嫌にゃ。」
俺はハンドルを持って前輪を押すことを諦めて背中に背負って走り出した。
ギャン!
俺は凄まじいスピードで差を詰め始めた。
「ブリット。お先にゃ!」
「御主人様、自転車は?」
「ここにあるにゃ。」
俺は背中のハンドルをブリットに見せた。
「それは自転車だったものなのでは。」
「失礼にゃ、これが自転車でなくて何なのにゃ!」
「まあ、私はどちらでも良いのですが。」
「これでいいのにゃ!遅れるにゃよ、ブリット!」
俺は更に両手も使い四つ足で走り始めた。
「にゃにゃにゃにゃ!」
俺は一気にブリットに追い付いついていた。
「御主人様!自転車はどうなされたのです?」
「自転車は背中にゃ!」
「ハンドルだけですか?」
「後は壊れたにゃ。でも、こっちの方が早いにゃ!」
俺はブリットを一気に抜き去り、朧車のリンに追い付いた。
「追い付いたにゃ!」
「しつこいわね。でもあなた量産型ではないようね。」
朧車のリンはジャージの上着のファスナーをあげ、胸元をきっちりと閉じた。
更にギアをシフトチェンジして速度をあげ距離を離した。
「く、全身の筋肉達よ!俺に力を貸してくれにゃ!」
パリパリ!
俺の言葉に反応するかの様に放電が激しくなった。
バヒュン!