第234話 朧車
輪入道は槍をかわして俺の背後を取った。
しかし、そこにはブリットが待ち構えていた。
ドン！
ブリットの背後からの蹴りで輪入道は頭から地面に突っ込んだ。
「あなたの相手は一人ではないのですよ。」
「おのれ！」
輪入道は炎を吹き出し激しく回転しながら俺達の周囲を回りだし、まるで一つや大きな炎の輪の様になっていった。
「この状況での攻撃と言えば全方向からの一斉攻撃にゃ！ブリット、こいつを使うにゃ。」
俺は手にした槍をブリットに手渡し、腰の刀を抜いた。
「これでも喰らえ！」
俺とブリットが背中合わせに構えると同時に輪入道が大量の火炎弾を放った。
ドドドドドドッ！
炎の輪の中心に向けて放たれた大量の火炎弾が俺達にせまる。
ドーン！
炎の輪の中心で大きな爆発が起こった。
その瞬間、２つの影が上空に飛び出した。
「上だ！」
輪入道が再び放った火炎弾が飛び出した影に直撃した。
ドドン！
２つの影は空中でバラバラとなり飛び散った。
「ぐわっははは！殺ってやったぞ！」
ドスッ！
高笑いする輪入道にブリットの握った槍を刺さっていた。
「なんじゃこりゃ？それじゃあ、今吹き飛んだのは？」
「あれは御主人様がつくられた分身です。」
「分身！」
「あの程度の火炎弾ならや避けるまでもないにゃ。」
実際のところ数発は叩き落としているのだが教える必要はない。
「さて、そろそろ止めといくにゃ！」
俺の声にブリットが槍の先に輪入道を引っかけて空中に投げた。
同時に俺も飛び上がった。
「俺流刀術一式Ｖの字斬りにゃ！」
俺は刀で輪入道を斜めに斬り着け、そのまま手首を返し切り上げた。
ズババッ！
「グギャア！」
輪入道は悲鳴をあげた。
「お見事です。御主人様！」
ガシャ！
地面に落ちた輪入道の傷を押し広げるように白い手が現れた。
ズルリ！
輪入道の中から現れたのはセーラー服の少女であった。
「全く役立たずなんだから。」
先程と違って少女は２つの燃える車輪の上にそれぞれ左右の足を乗せて立っていた。
「結局、こっちが本体にゃ。」
「そう言うことね。自転車付喪神改め朧車のリンと言います。」
前回のハサミの付喪神と違って話しは通じそうである。
「自転車泥棒を捕まえて制裁を加えるようなことは止めるのにゃ！」
「そうね、止めても良いけど、条件が有るわ。私と自転車を使って勝負をして、あなたが勝ったら止めてもいいわ。！」
「自転車で何をするにゃ？」
「レースよ。ロードレース。」
「分かったにゃ。ロードレースで勝負するにゃ。」
