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第232話 護鬼

 天邪鬼が妖樹の種を石に埋め込んで生まれた石や岩の塊の巨人は晴明はるあきに向かって拳を降り下ろした。

 一方、晴明はるあきは避けようともせずに両手をポケットに入れ、その場に立ちっているだけだった。

ガシッ!

 岩石の塊の巨人の拳は晴明はるあきに当たることなく止まっていた。

 正確には晴明はるあきの影から伸びた黒い巨大な手によって受け止められていた。

付喪神つくもがみの出来損ないごときが俺の相手になるかよ。護鬼ごき!」

グシャ!

 黒い巨大な手が受け止めた岩石の塊の巨人の拳を握り潰した。

 そしてそのまま晴明はるあきの影から鋼鉄の様に黒光りする肌をした二本角の逞しい鬼が姿を現した。

 晴明の式神護鬼である。

 拳を握り潰されよたよたと後ろに下がった岩石の塊の巨人の頭に背丈5メートルの黒い鬼が拳を叩き込んだ。

ゴワシャ!

 護鬼の拳は岩石の塊の巨人を粉々に粉砕した。

「後は頼んだぞ。ブリット。」

 現場は燃え上がる車、抉れた路面、散乱する岩と土砂で凄い状態になっていた。

 晴明はるあきが印を切ると燃え上がっていた車が一枚の護符となり一気に燃え尽きた。

「さて人が集まる前に移動するかな。」

 次の瞬間、晴明と護鬼の姿はかき消すようにきえていた。


雷撃波サンダーブレイク!」

 俺は這いよる自転車に電撃を叩きつけ動きを止めていた。

 気が付くと俺の周りを囲むように自転車が積み重なっている。

 電撃で動きを止めた自転車も時間かが経つと回復して動き始める。

「これはちょっとやばいぞ。」

 今の俺の魔法では完全に破壊するまでの力が不足していた。

 俺は自転車お互いに絡み付いて少しずつ大きな塊になっていっているのに気付いていなかった。

 そしてそれは突然立ち上がった。

 自転車に同士が絡み合い一匹の獣の姿は形作っていた。

 4本の太い四肢に巨大な顎をもった鉄の獣であった。

「この展開はちょっと予定外だったな。」

 俺は既に走って逃げ回るだけだった。

御主人様マイマスター!」

 その時、視界の端にブリットが飛んでくるのが目に入った。

「ここだ!ブリット!」

 俺がブリットに気を取られて作った一瞬の隙を鉄の巨獣は見逃していなかった。

バクン!

 俺は一口で鉄の巨獣に飲み込まれてしまった。

御主人様マイマスター!」

 ブリットは半狂乱になって叫び、鉄の巨獣に組み付いた。

 俺は鉄の巨獣の腹の中で生きていた。

 腹の中と言っても複雑に絡み合った自転車の部品の中に埋もれていた。

 手も足も全く動かす事が出来ない上に徐々に身体を締め付けが強くなっていく。

『くそ!にゃんこ騎士だった頃であればこんな奴に遅れをとることはなかったのに。』

 俺がそう思った時、腕に着けた輝夜からもらった腕輪が輝いた。

 そして鉄の巨獣の腹が大きく膨れ上がって破裂した。

 破裂した鉄の巨獣の腹の上に立っていたのは懐かしのにゃんこ騎士であった。

「死ぬかと思ったにゃ?」

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