第226話 零課
俺と晶と翔の3人は晴明のアメ車に乗せられ警察に連いていった。
警察と言っても安倍晴明の所属する警視庁刑事部零課は他の警察組織と完全に分離され、ビジネス街にある雑居ビルがその拠点であった。
今は取調室で待たされている。
取調室といっても固定されたテーブルと椅子がある10畳ほどの部屋で出入口のドア以外に窓などはなかった。
日本の刑事ドラマで見る取調室と言うよりハリウッド映画でみるFBIとかCIAの取調室って感じだ。
「あの革ジャンの人、本当に警察の人なのかな?」
俺は隣に座る晶に小声で聞いた。
「化け猫の兄ちゃん、本当に何も知らないんだな。」
晶の代わりに翔が答えた。
「だから化け猫じゃないって言ってるだろ。俺は人間だ。」
「猫又連れた妖気を纏った人間が居るわけないだろ。俺達の正体を聞いても驚きもしないし、さっき
付喪神相手にしていた動きも人間技じゃなかったじゃないか。」
「来人は化け猫じゃないにゃん。にゃんこ騎士にゃん。」
「何でそこまでばれてて認めないのか知らないけど、あの安倍晴明って刑事には逆らうなよ。」
「何でだよ。まあ、逆らうつもりはないけど。」
「あいつは妖怪の天敵だからだよ。」
「翔、この部屋の会話は全部きかれてるんだから軽はずみなことは言わないでよ。」
「分かってるよ。でも晶も俺と一緒に山に帰っていたらこんなところに来ることは無かったんだ。」
「山に帰る話は関係ないでしょ。別に私達は人を襲ったわけじゃないし、むしろ人助けをしたんだから感謝状の一つも欲しいくらいよ。」
ガチャ!
その時、取調室の出入口のドアが開き3人の人物が入ってきた。
「彼があの化け猫と呼ばれているのが前に竜巻に飛ばされて電波塔の上で発見された少年なんだな。」
偉そうに喋っていたのは刑事部零課の課長安倍(安部)輝夜だ。
見た目は綺麗な黒髪を腰までのばした20代半ば位のグラマーな美女である。
「そうです。妖怪ではなくヒト科に属していますが強い猫の妖力の反応があります。連れている猫又は使い魔と思われます。」
答えたのは間宮鈴は情報分析官でコンピューターの天才である。
3年前に13歳の若さで警視庁のコンピューターシステムをハッキングした腕を買われ輝夜がスカウトしたのである。
現役の女子高生でこの仕事はアルバイトである。
「妖怪に成り立てってことか。道理で地下世界に疎いわけだ。」
そして安倍晴明である。
「からす天狗とカミキリは西の大天狗から申請された登録証を所持していますので身元はハッキリしています。」
「彼等が退治したハサミの付喪神だけど残留妖気は奴のものだったよ。」
「奴……天の邪鬼か。あれにも困ったものだ。」
「あの……」
「3人とも協力感謝する。身元もハッキリしたから帰って良いぞ。晴明、送って行け。」
「俺がかい。」
「他に誰がいる。」
「人使いの荒い婆さんだぜ。」
ドスッ!
輝夜の肘鉄が晴明のみぞおちに吸い込まれる。
「誰が婆さんだ。」
「ぐっ、孫が祖母を婆さんって呼んで何が悪い。」
ドスッ!
「分かった、お前達、送ってってやる。」
「あの、祖母って?」
「言葉の通り、輝夜課長は俺の婆さんだよ。」
輝夜は晴明の祖母であった。