第225話 妖怪刑事
「晶さんの正体なんか知らないよ。とにかく話はこいつを退治してからってことで。」
そう言って俺は辻斬り美容師に火炎弾を放った。
ボオン!
火炎弾は辻斬り美容師の足元で爆発して地面が抉れる。
辻斬り美容師は抉れた地面に足を取られ体勢を崩した。
ガキン!
晶はその隙を逃さずに辻斬り美容師の胴を払った。
ガシャン!
派手な音を立てて辻斬り美容師が吹き飛ぶ。
「今だ、雷撃波!」
バリバリバリッ!
凄まじい電撃が辻斬り美容師に直撃する。
地面に足が着いていない状態で雷撃波を受けた辻斬り美容師は電流を受け流すことが出来なかった。
「ギャー!」
ボン!
辻斬り美容師は雷撃波の威力により空中に巻き上げられ煙を上げて爆発した。
ヒュー、ポトッ!
爆発の後に地面に落ちてきたのは小さな理容ハサミだった。
「そのハサミが辻斬り美容師の正体だったのか。」
晶が拾い上げたハサミを見て俺は呟いた。
「でもこんなに新しいハサミが付喪神になるなんて変ね。」
「付喪神って古い道具に魂が宿って妖怪になるって奴だろ。」
「えぇ、でもこのハサミは妖気を纏えるには新しすぎるのよね。」
「妖気って魔力のことなのか?」
「魔力?さっきから何を言っているの?猫又を連れてるし、あなた妖猫つまり化け猫なんでしょ。」
「うーん、そう言われれば間違いないかもね。でも化け猫じゃなくてにゃんこ騎士かな。」
「にゃんこ騎士?私はカミキリ。カミキリの
晶よ。」
そこにからす天狗の翔が飛んで降りてきた。
身構える俺に晶が言った。
「大丈夫、あいつは仲間よ。からす天狗の翔って言うの。」
「晶、結界は解いた。人が集まってくる。早くここを離れよう。化け猫も急げ!」
「それならまだ結界を張っておけばよかったのにゃん。」
コニャコが小声でぼやいた。
「聞こえてるぞ、猫又。ここは山奥じゃ無い。結界の違和感はすぐに気付かれるんだ。」
「げ、地獄耳にゃん。」
「ぐずぐずするな!」
ブン!
その時、再び空間が歪んだ。
「翔、また結界を張ったの?」
「おれじゃ無い。」
ブロロロ!
大きなエンジン音をさせた派手なアメ車に乗った黒い革ジャンを着た男が現れた。
「おや、付喪神のはずがとんだ大物がかかったな。からす天狗、カミキリ……化け猫か?」
「あのどちら様で?」
俺は革ジャンの男に聞いた。
「俺は警視庁刑事部零課妖怪取締班の安倍晴明だ。」
「警察?」
「まあ、詳しい話は署でゆっくり聞こうか。」
「私達ちゃんは登録してる。署にいく理由は無いわ。」
晶と翔は懐からカードを取り出して晴明に見せた。
「なるほど、そっち化け猫は?」
「俺のこと?」
「登録証を見せな。」
「運転免許ならあるけど。」
「何だ、未登録妖怪か。じゃあ取り合えず全員ご同行願おうか。」
「来人くん、何で登録してないのよ。未登録妖怪はいきなり撃たれたって文句言えないんだから。」
「だから俺は妖怪じゃあ無いって。」