第224話 化け猫って、俺のこと?
「愛奈ちゃんは何処にいるんだ?」
「お前、店長の愛奈さんを知っているのか?」
「愛奈ちゃんは私を捨てた……」
「捨てたってどういうことだ。」
「私はあの子に捨てられた。私はもっと働きたかったのにもっともっと。」
徐々に辻斬り美容師の人間のようだった身体が金属の様に銀色に変化していった。
両腕、両足が剣の様になり、全身が鋭い刃物に変った。
「かなり危ないスタイルにゃん!」
「ちょっと話が違うじゃないか。ブリットが踵落とし一発で倒せたんじゃないのか!」
辻斬り美容師は完全に正気を失っていた。
刃物と化した手足を振り回し、俺に襲いかかってくる。
今の俺の手に愛刀の武御雷は無い。
こちらの世界に戻るときに異世界に残った修一に預けて来たのである。
今の俺は炎と雷の魔法は使える。
電光石火を使ってスピードをあげ、辻斬り美容師の攻撃を躱していた。
「これでも喰らうにゃん!」
バリバリ!
コニャックか雷撃を放った。
しかし辻斬り美容師はアースの様に電気を地面に流して全くの無傷であった。
「コニャコ、余程の大技を喰らわせない限り電気系の技は効かないと思うぞ。」
「先に言うにゃん!」
コニャコは身軽に辻斬り美容師の攻撃を躱しながら言った。
しかし、こんな市街地で大技を使ったらどんだけ被害が出るのか分からない。
「来人くん、大丈夫?」
俺とコニャコが辻斬り美容師と戦い繰り広げる中、晶が現れたのである。
「晶さん、来ちゃ駄目だ。危ない!」
辻斬り美容師は晶に気付くと、晶に襲いかかった。
「危ない!」
俺は晶に飛び付いて、辻斬り美容師の晶への攻撃を回避した。
ザン!
辻斬り美容師の剣となった腕が俺の肩を切り裂いた。
「ぐっ!」
俺は痛みに顔をしかめた。
「晶さん、逃げて!」
しかし、晶は逃げる訳でもおびえる訳でもなく立ち上がった。
「晶さん、何を?」
「付喪神ごときがなまいきな。」
続けさま斬りかかってきた辻斬り美容師の一撃を晶は弾き返した。
晶の手には巨大なハサミが握られていた。
「あんたが暴れると私の職場が店長の愛奈さんがお客の皆がそして私が一番迷惑するのよ。」
そこに店で見るおとなしい晶の姿はなかった。
巨大なハサミを振り回して、辻斬り美容師と打ち合っている。
激しく金属同士を打ち合う音が響き渡る。
「やれやれ、無鉄砲な奴だ。あれで何で客の前で上がるかな。しかし、そんなに派手に暴れたら人が集まって大騒ぎになってしまうぞ。晶の奴、まだ山に帰る気にはなっていないしな。仕方がない手を貸してやるか。」
ビルの上から晶の様子を伺っていたカラス天狗の翔は呟いた。
翔は両手の指を組み印を切った。
「鞍馬流結界術!」
ブン!
一瞬、空間が歪む。
「これは鞍馬流結界術。ありがとう、瞬。」
怒りに我を忘れていた晶が我に返った。
「ちょっと、何してんのよ。あんたもぼさっと見ていないで手伝いなさいよ、化け猫!」
「化け猫って、俺のことか?」
「何、言っているの?あなた以外に何処に化け猫がいるのよ。あれだけ妖気を垂れ流しといて、あんただって妖怪だってばれたらまずいでしょ。」
「妖怪って、晶さん。妖怪なの?」
「え、あなたも私の正体分かっていたんじゃないの?」