第222話 ブリット対辻斬り美容師
人気の無い公園で一人の若い女性が恐怖の為に座り込んでいた。
ブリットは知らないが来人が行った美容室の美容師樹理であった。
樹理の前にはハサミを持った人影が立っている。
ちまたで噂の辻斬り美容師であった。
「女性が襲われるのを見過ごしたら御主人様から怒られますからね。」
座り込んでいた樹理が立ち上がりブリットの後ろに隠れた。
「助けて下さい!」
「こちらの女性も嫌がっているし、私も買い物の帰りで急いでいます。おとなしく立ち去ってくれないかな。」
辻斬り美容師は目の前のブリットのきれいな金髪を見て言った。
「カットしがいのあるきれいな髪。」
シャキ、シャキ!
辻斬り美容師はハサミを鳴らすとブリットに襲い掛かってきた。
辻斬り美容師は素早い動きでブリットの髪を狙ってハサミを振う。
ブリットは華麗な体捌きで辻斬り美容師のハサミを躱すが両手に持った買い物袋が邪魔で反撃が出来ない。
「私は忙しいんですよ。早く帰らないとアイスが溶けてしまうじゃないですか。それに私の髪はカットの必要は有りませんから。」
辻斬り美容師は執拗にブリットの髪を狙って
ハサミを突き出す。
「いい加減にしろ!」
そろそろ相手をするのが面倒になってきたブリットは右足を高く蹴りあげると辻斬り美容師の頭に鋭い踵落としを叩き込んだ。
ガン、ドシャ!
ブリットの踵落としを喰らった辻斬り美容師は頭から地面に倒れ込んだ。
「しまった。やりすぎた、生きているだろうな!」
人間なら大怪我をしてしまうような一撃を入れてしまい、ブリットは慌てて倒れている辻斬り美容師が生きているか確認しようとその身体に触れた。
プニッ!
「この感触は?女か!」
その時、辻斬り美容師が飛び起ききびすを返して逃げ出した。
その時、樹理の目に深く被ったフードで見えたなかった辻斬り美容師の顔がちらりと映った。
「あ、あれは。」
それは樹理のよく知る顔であった。
ブリットは辻斬り美容師にそれほど興味が無かっため追いかけることはしなかった。
「助けて頂いてありがとうございます。私、樹理って言います。」
「そうですか、樹理さん、あいつもいなくなったんで大丈夫でしょう。それじゃあ、私は急いでいますのでここれで失礼しますね。」
ブリットは助けた若い女性にそう告げると後ろを向いて歩き出そうとした。
しかし、ブリットの服の裾を樹理がしっかり握って離さない。
「普通、こういう場合、お嬢さん家まで送りましょうってならないなかなー?」
「いや、それだけ元気なら大丈夫では?」
「送って!」
「あの……」
ブリットは樹理の勢いにたじたじである。
樹理にはブリットが白馬の王子様に見えていた。
それから20分程後のことである。
俺はお袋から夕飯だと呼ばれて、二階の自分の部屋からダイニングに降りていった。
そこには親父とお袋、ブリットと共に樹理が食卓を囲んでいた。
「噂の辻斬り美容師に樹理さんが襲われていてたのをブリットが助けたのは分かった。それで何で樹理さんが何でここに?」
「いえ、御主人様、彼女が怖くて一人で帰れないと言いますので放ってはおけませんでした。ですが買い物したものを早く持って帰る必要もありましたので先にこちらに寄ったのです。」
「それもまあいいんだが何でそのまま樹理さんも食卓囲んでんの?」
「来人、お客さんに失礼でしょ。」
「来人くん、ご馳走になりまーす。」
「来人、良いじゃないか大勢で食べた方がおいしいだろ。」
まあ、俺の父親も母親もこんな感じだから、ブリットとコニャコもすんなりと家族の一員となってしまった。
「来人くん、今度は晶ちゃんじゃなく私がカットしてあげるよ。」
「何だ来人、知り合いだったのか。」
「知り合いっていうか、今日行った美容室の人だよ。」
結局、親父とお袋と意気投合した樹理は翌日が定休日ということもあり、そのまま泊まっていってしまった。