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にゃんこ騎士冒険記にゃ!《異世界でゆるきゃらナンバーワンを狙う》  作者: 風丸
第2部 にゃんこ騎士と百鬼夜行 第1章 辻斬り美容師編
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第221話 妖怪カミキリ

 講義の後、俺が連れていかれたのは洒落た美容室だった。

「来人、ここでそのボサボサの頭をサッパリしておいでよ!」

「ちょっと待てよ!俺、美容室に来るほど持ち合わせないぞ。」

「大丈夫、カットモデルだからお金かからないんだから。」

「ただならいいかって、とんでもない髪型にされるんじゃないだろうな。」

「心配ないって今よりひどくなることはないから。」

「そう言う問題じゃないだろ。」

ウィーン!

 その時、店の入口の自動ドアが開き、20代半ばの綺麗な女の人が出てきた。

「何、店の前で騒々しい。あら、理沙ちゃんカットモデルに来てくれたの。」

「こんにちは、愛奈まなさん、今日はお願いします。それと来人も一緒にお願い出来ますか?」

「大歓迎よ。さあ、二人とも中に入って。」

 俺は愛奈に背を押されて断ることも出来ずに店の中に入っていた。

「今日はうちの新人にやってもらうんだけど、こっちが樹理じゅりにそっちがあきらよ。」

 樹理と呼ばれた子は背の高い明るい感じの人当たりの良さそうな女の子だった。

 晶と呼ばれた子は小柄のやけに人見知りな感じの女の子だった。

「樹理です。よろしくお願いします。」

「晶……」

「ごめんね、晶、ちょっとに人見知りが激しくてね。腕は良いんだけどね。と、言うことでそのためにも接客の練習もさせたいの。頼むね、来人くん。」 

 俺が人見知りっ子の方なのかって思ったら沈黙のままカットが始まった。

 しかし、言われた通り腕は良さそうだった。

「へぇ、上手いんだね。」

 俺が声をかけると晶は顔を真っ赤にして、手を止めてしまった。

「あの、その……すみません!」

 晶は顔を真っ赤にしたままで店の奥に逃げ込んでしまった。

「やっぱり、ダメか。ごめん、続きは私がするから。」

「それはいいんだけど彼女どうしたの?」

「晶はお客に話しかけられると上がっちゃって手が震えるんだ。腕は良いんだけどね。美容師で話をしない訳にはいかないし、このままじゃ、お客のカットはさせられななくてね。」


 店の裏口では晶が一人泣いていた。

「くそ、どうしてお客と話そうとすると緊張して手が震えるんだよ。髪を切るのに話す必要なんてないじゃないか!」

「なあ、カミキリ。いい加減にあきらめて山へ帰ろうぜ。」

 晶をカミキリと呼んだのは晶と同じ年頃の青年だった。

「やだ、私はここで美容師として成功するんだ。お前だけで山へ帰れよ、しょう!」

「俺達、妖怪が人間の社会で成功するなんて無理なんだよ。」

「そんなことはないよ。絶対、美容師で成功するんだ。」

「そんなこと言っても人間と話が出来なければ美容師としてはやっていけないだろ。」

「う、その内、慣れるさ。シャンプーなら出来るんだ。」

「無理だね、極度の人見知りの癖に美容師にトークは必要だぜ。それに最近この辺に出ている辻斬り美容師ってお前の事だろ。調子に乗っていると正体がばれるぜ。」

「それは私じゃないよ。」

「一瞬でカットするなんて人間に出来るはずないじゃないか。出来るのは妖怪カミキリのお前位だろ。」

 その時、裏口のドアが開き樹里が顔を出した。

「晶、いい加減中に入って手伝いなよ。さっきのお客は帰ったよ。」

「はい、すぐに行きます。」

「今、誰かと話していた。人の声が聞こえた様な気がするんだけど。」

「いいえ、気のせいじゃないですか。」


「どう、来人、さっぱりしたでしょ。」

「ああ、髪を切ったのはひさしぶりだからな。」

「ねえ、あの晶って子、人じゃないわね。」

「エリスが理沙のカバンから頭を出して言った。

「エリス、いたのか。」

「聞いてんのあの晶って子、隠していたけど、かすかに魔力を感じたわ。魔人か魔物ね。ひょっとしたら、噂の辻斬り美容師だったりして。」

「微かにね。」

「何の話よ。魔力って?」

「あれ、魔法のはなしだよ。理沙もこっちの世界に帰ってきてもつかえたじゃないか?」

「あ、あれね。一月もしたらきれいに使えなくなっちゃったわよ。てっきり来人もそうだとおもってたわ。」

「俺は炎と雷は今も使えるよ。魔法書グリモアで覚えたからかな。」

「いいな、来人。」

「電化製品がショートしたりして不便だよ。このあ間はゲームのセーブデータが飛んでたしね。」

「そうね、無くても困らないわね。」

「それで魔力って言うか変な気配は分かるんだよ。」

「でも、あの晶って子が人間じゃないにしても辻切り美容師じゃないと思うわよ。」

「なんでだよ?」

「だって、晶って子、俺の髪を切れずに逃げたもの。髪を切る辻斬りなんて出来ないでしょ。」

「それもそうか。」


 その夜、ブリットは来人の母親の里子に頼まれ近くのスーパーに買い物に行っていた。

「買い忘れは無かったですね。」

 ブリットは両手に買い物袋を幾つも持っている。

「飛んで帰ればすぐなんですがね。」

 ぼやきながら人気の無いガード下を通りかかった時、ブリットの耳に女性の悲鳴が聞こえた。

「やれやれ、急いでいるときに限って何か起こるんですよね。」

 ブリットは久しぶりに電光石火ライトニングを発動させ悲鳴がした方へ走り出した。

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