第22話 バンパイアが来たにゃ
俺たちはミド村長バジル邸の娘ミーシャの部屋にいた。
ミーシャは18歳の可愛らしい女の子だったが意識がなく部屋のベットの上に寝かされていた。
毎晩、深夜0時ころにバンパイアが現れるとのことだった。
ミーシャの部屋は6畳程の大きさの部屋にベットと衣装ダンスの置かれた質素なものだった。
今は部屋中ににんにくと十字架がつるされていた。
「来人、このにんにくと十字架は何の役に立つんだ。」
「何を言うにゃ、シデンくん。バンパイアと言えば、にんにくと十字架にこれにゃ。」
そう言って俺は木の杭と木槌を構えた。
「よく分からないけど、来人には考えがあるんだよ。シデン。」
そうシデンに言ったフィーネも首を傾げていた。
そして、俺はベットの下、シデンは衣装ダンスの中、エリスはカーテンの陰、デューク、アリア、フィーネはドアの外でバンパイアが現れるのを待った。
そして、夜中に部屋の窓が自然と開きバンパイアが姿を現した。
「待っていたかい!マイ、ハニー。」
現れたのは俺のイメージの黒いマント姿とはかけ離れていた。
ピンクのシャツを着たとってもうざいバンパイアだったのだ。
俺は自信を持ってデコレーションした大量のにんにくと十字架の効果をワクワクしながら待った。
「すごい飾り付けだね。何だいこのにんにく?僕に元気になってくれってことかい。」
バンパイアはそう言うとにんにくを手にするとバリバリとかじった。
「この十字架は余りセンスのいいものとは言えないね。」
バンパイアは十字架を手にすると肩をすくめ放り投げた。
俺は『何でバンパイアなのににんにくや十字架が効かないの?』とショックを受けていた。
俺はここが異世界であり自分のバンパイアの常識が通用しないことに気付いていなかった。
「そこまでだ、バンパイア。」
衣装ダンスから、シデンが飛び出した。
「う、臭い。」
シデンは、強烈なにんにくの臭いに鼻をつまんだ。
「来人、結局、お前、何がしたかったんだ。うぇ、くせえ。」
俺は強烈なにんにくの臭いに吐き気をもよおしたが木の杭と木槌を捨て剣を抜いた。
「バンパイア、覚悟。」
俺はにんにくと十字架のことは無かったことにした。
「何だ、お前等は?」
バンパイアが身構える。
「うぇ、くせえ。」
続けて部屋に飛び込んできた、デューク、アリア、フィーネが強烈なにんにくの臭いに身悶える。
「ごめん、分かってるから言わないで」俺は、心の中で皆に謝った。