第216話 黒龍王の暴走にゃ
黒龍王アスラの攻撃のパワーとスピードは暴走が進むにつれ、どんどん上がっていく。
真にゃんこ騎士はまだ攻撃を受け流すことが出来ているがいずれ限界点に達した時点で爆発して終わりとなってしまう。
「来人、爆発する前にアスラの核を破壊するのです。」
「フェリシア、核ってどこにゃ?」
「アスラの魔力が中心です。幸い暴走によって分かりやすくなっています。私の眼を来人の眼と同調させます。」
次の瞬間、俺の視界に魔力の流れがイメージとなって表れた。
黒龍王アスラの胸を中心にして魔力の渦が見えた。
「あれが核にゃ!」
「もう限界寸前です。核を外したら爆発しますから二度目は無いですよ。」
「あの動きで核以外は当てられない何て無理にゃ!」
「放っておいてもドカンですよ。私はエリスを連れて離れますので後はがんばってください。」
「フェリシア、それはずるいにゃ!」
黒龍王アスラは既に意識を失っているらしく動くもの全てを反射的に攻撃していた。
「黒龍王アスラ、これで最後にするにゃ。」
真にゃんこ騎士は黒龍王アスラに剣を向けて構えると目を閉じて動きを止めた。
フェリシアに同調した眼は魔力の流れだけが見えた。
吹き飛ばされてきた石が身体に当たるが意識を黒龍王アスラの核だけに集中する。
「神速!」
ザン!
真にゃんこ騎士の姿が一瞬消えて黒龍王アスラを挟んで反対側に現れた。
その剣の先に黒い龍珠が刺さっていた。
吹き荒れていた黒龍王アスラの魔力は吹きやんだ。
同時にゆっくりと膝を着き、黒龍王アスラは倒れた。
「終わったにゃ。」
そう呟いた俺の目に飛び込んできたのは、剣の先に刺さった龍珠から這い出て来たムカデだった。
ギチギチ!
「げっ!気持ち悪いにゃ!」
俺は剣からムカデを振り落とした。
「アメイシアの記憶にもこんなものは無いわ。これが黒龍王アスラがアメイシアに従わなかった原因かしら?」
「とにかく、消し飛ばすにゃ!」
俺はムカデを消し飛ばそうと手から光弾を放った。
ボシュ!
ムカデは光弾を吸収し、30センチ程の身体が倍に大きくなった。
「こいつ、魔力を吸収するにゃ!」
ムカデは更に落ちていた龍珠の破片を食べて更に倍に大きくなった。
既に1メートルを軽く超えたムカデの背中が割れ小さなコウモリの様な羽が生えてきた。
「こんなもの魔物、聞いたことが無いわ。」
エリスが呟いた。
ヒュン、ドスッ!
その時、一本の木の杭が飛んできてムカデを床に串刺しにした。
ムカデはのたうち回って苦しがっていたがやがて動かなくなり、ボロボロと崩れる様に消えた。
「こいつには、魔力も金属製の武器も効かないの木の杭を突き刺すか小さいうちに踏み潰すことね。」
聞いたことのある声に振り返ると立っていたのはメフィストだった。
「お前はメフィスト、こいつはお前の仕業にゃのか?」
「違うと言っても信じないでしょうけど、私はこんなグロテスクな物は使いませんよ。それからこの子を忘れていましたよ。」
そう言うと小脇に抱えていたグミライトライムを床に降ろした。
「グミライトライム!忘れてたにゃ。」
「アスラの起こした爆発で吹き飛ぶところだったんですよ。」
「何でお前が助けるにゃ!」
「気まぐれですよ。その代わり、こいつを貰って行くよ。」
いつの間にか何も持っていなかったメフィストがアスラの身体を抱き抱えていた。
胸が上下に動いていることから死んではない様である。
しかし、龍珠を破壊したアスラの身体からは龍の気は消えていた。
「それじゃあ、また会いましょう。」
そう言うとメフィストの姿は消え去った。
「待つにゃ!」
そう言った瞬間、完璧融合合体が解けてしまった。
「もう無理にゃ、だけど終わったにゃ。」
そう言うと俺はその場に座り込んでいた。