第214話 フェリシアにゃ
俺達は黒龍王アスラの圧倒的な力の前に抗うことさえ許されなかった。
「どうした、お得意の合体はしないのか?10秒だけ待っててやろう。その間に合体しろ!」
「だめにゃん。どうせさっきみたいに手も足も出ないなゃん。」
「それもそうだにゃ。」
「御主人様。今、やらなくてどうするんです。」
「そうだにゃ、俺達を信じて皆、戦っているんだったにゃ!」
「でも死んだら意味ないにゃん!」
「ここが男の見せ場ですよ。御主人様。」
「どうするにゃん?」
「どうするんです?」
「ブリットもコニャコも好きなことを言って、やるにゃ、やってやるにゃ!!融合合体にゃ!」
俺とブリットとコニャコが重なった。
バチッ!
俺達は融合合体することが出来ずに弾かれてしまった。
「どうなったにゃ?何で融合合体が出来ないにゃ!」
「何だ合体しないのか、つまらんな。」
黒龍王アスラは剣を振りかぶり魔力を込めた。
「やばいにゃ!」
「来人、何で融合合体出来ないにゃん。」
「御主人様、冗談は止めて下さいよ。」
「冗談なんてやってないにゃ。とにかく、このままでやれるだけやるにゃ。皆、一斉にかかるにゃ。!」
「分かったにゃん。」
「承知しました。御主人様。」
俺とブリットはコニャコが黒龍王アスラに向かって雷撃を放つと同時に攻撃を仕掛けた。
「くすぐったいだけよ!」
黒龍王アスラはコニャコの放った雷撃の直撃を受けながら平然と剣に込めた魔力を光弾にして俺達に向けて放った。
ドーン!
俺とブリットとコニャコは光弾の爆発の威力で吹き飛ばされ地面に倒れた。
「これでも手加減したのだぞ。まだまだ楽しませてくれ。」
黒龍王アスラは己の力に酔いしれていた。
「まだ、負けないにゃ!」
俺は立ち上がると剣を構えて黒龍王アスラに向かって斬りかかった。
キィン!
黒龍王アスラは俺の剣を軽々と剣で受けた。
続けざま俺の背後からブリットが飛び出し、黒龍王アスラに蹴りを放つ。
「上手い連携だ。しかし、まだだ。」
グシャ!
黒龍王アスラは俺の頭を踏み台に飛び上るとブリットの蹴り足を掴んで受けるとそのまま床に叩きつけた。
バキッ!
「三段攻撃にゃん。」
わずかな隙を突いてブリットの頭に乗っていたコニャコが黒龍王アスラに飛びついた。
ガリッ!
コニャコは黒龍王アスラの顔を引っかいた。
「やったにゃん。一矢酬いたにゃん。」
その瞬間、黒龍王アスラがコニャコの尻尾を掴んで放り投げていた。
「にゃー!」
しかし、コニャコがつけた引っかき傷も一瞬で治癒してしまった。
「こんな攻撃、避けるまでもないわ。」
黒龍王アスラはそう言うと倒れている俺の背中を踏みつけた。
バキ!
俺の肋骨が嫌な音を立てた。
「この程度で骨が折れたか?」
「いや、背中が鳴っただけにゃ。」
「まだ、そんな減らず口を叩けるのかい。」
黒龍王アスラは俺を蹴り上げた。
「しまった、一言多かったにゃ。」
俺は蹴り飛ばされて転がりながらつぶやいた。
その時、突然、黒龍王アスラが胸を押さえて苦しみだした。
胸の辺りが光ると徐々に元の体格の良い、男の身体に戻っていく。
「やっと、さっきの俺の攻撃が効いてきたにゃん。」
コニャコの言葉は俺とブリットから聞き流された。
ポン!
黒龍王アスラの胸から光る玉が飛び出した。
光る玉は上空で徐々に人の姿を形造っていき、やがて淡く光るエメラルドグリーンの髪の白色のドレスを着た女性となった。
「顔はフェリシアにゃ。でも何か違うにゃ。」
「御主人様、顔はフェリシアもアメイシアも一緒ですよ。」
「そうだったにゃ。」
「あれはフェリシアとアメイシアどっちなのでしょうか?」
「フェリシアにゃのか?」
俺は取り合えず本人に聞くことにした。
「来人、私はフェリシアですが、アメイシアでもあります。元通り1人に戻れたのです。」
フェリシアが俺達の傍に降り立った。
「やったにゃ、フェリシア!」




