第197話 悔いなしにゃ
黒と赤と白の三頭の龍は死力を尽くして戦っていた。
赤龍フドウは身体を捻って黒龍の放った火炎弾をかわし、黒龍に体当たりをした。
ドオーン!
大きな音と共に赤龍フドウの巨体が黒龍にぶつかる。
しかし、黒龍はその体当たりに微動だにせず赤龍フドウの首を掴んで地面に叩きつけた。
ガシャーン!
更に赤龍フドウを踏みつけようとした黒龍の軸足をヴァイスが尻尾の一撃で払った。
ドウン!
黒龍はバランスを崩し倒れる。
ヴァイスは全体重をかけて黒龍を踏みつけようとした。
それを黒龍は龍の咆哮を放ち吹き飛ばした。
黒龍は忘れかけていた戦いの緊張感に喜びを感じていた。
『楽しいぞ、赤いのと白いの!このヒリヒリする緊張感がたまらんわ!全盛期には比較にならない程度の力しかないがお前達を相手にするには丁度良い。』
「くそ、馬鹿にしてやがる。」
「ヴァイス、奴の言うことはおそらく正しいのだろう。」
「じゃあ、どうするんだ。」
「我らの特技を生かす。」
「なるほど、あの手か。分かった、魔力が尽きるまでやってやる。」
「行くぞ、ヴァイス!」
「おう!」
『相談は終わったか?それでは戦いを再開だ!』
フドウは黒龍の右手に回り込むとか火炎を放った。
黒龍は避けることもせずにフドウの火炎を受け止めた。
『貴様の炎など効かぬわ!』
同時にヴァイスが黒龍の左側に冷凍波を放った。
黒龍はこれも避けずに受け止めた。
『芸も無くまた冷凍波か。貴様ら程度の力では痛くも痒くも無いわ。』
黒龍は龍の咆哮をフドウとヴァイスに目掛けて放った。
ドウン!
黒龍の龍の咆哮を受けてフドウとヴァイスは膝をついた。
しかし、フドウとヴァイスは再び火炎と冷凍波で攻撃を続けたのである。
『何のつもりだ、効かぬと言っておるのに。』
黒龍は再び龍の咆哮を放った。
ドウン!
フドウとヴァイスに黒龍の龍の咆哮が命中する。
苦悶の表情を浮かべながらフドウもヴァイスも攻撃を止めなかった。
ピシッ!
今度は黒龍が苦悶の表情を浮かべ叫んだ。
『何だ何をした。』
ピシピシッ!
黒龍の身体のまん中を縦断する様に細かいひび帯が出来る。
「どんなに強い物質でも急激な温度差にさらされれば脆くなるよる。お前の身体も例外ではなかったようだな!」
『それでしつこく交互に攻撃していたのか。見事だ、生身で無い我には身体のの変化に気づけなかったようだ。』
黒龍の身体は細かい砂の様になって崩れ落ち始めた。
『そろそろ、この身体の限界が来たようだ。最後にお前達と戦えて楽しかったぞ。我に悔いはない去らばだ若き龍達よ……』
黒龍はそう誇らしげに言うと崩れ去った。