第195話 龍達の死闘だにゃ
「ふーっ!危ないところだった。あんなの何度も受けていられるか。」
消えたように見えたフドウは人型に変身して骨黒龍の牙から逃れたのであった。
右往左往していた骨黒龍もどうにか頭を見つけ首の上に乗せた。
「こうなっては伝説の黒龍も哀れなものだな。」
「あんた達、何やってるの!真面目にやんなさいよ!」
ティアが骨黒龍、骨騎士ジャイアントを怒鳴り付ける。
その時、骨だけのはずの骨黒龍の頭蓋骨の眼窩がの中に炎が宿った。
『妖精フゼイガ我二命令ヲスルナ!』
「えっ!」
突然、骨黒龍に怒鳴りつけられて顔を青くする。
『我ハ黒龍!』
骨黒龍は骨騎士に組み付き頭からバリバリと食べだしたのだ。
「何するの骨黒龍、やめなさない。骨騎士は味方よ!」
『ガーッ!何味方ダ!』
骨だけの骨黒龍の身体を噛み砕いた骨が覆っていく。
骨黒龍が骨騎士ジャイアントを食らい尽くした時、骨黒龍の骨格だけの身体を骨騎士の身体と武器と防具で作り上げた肉体が覆っていた。
そして仕上げとばかりに身体から炎が吹き出した身体を黒く染めていった。
「黒龍!」
『部様ナ姿ダガ貴様ラヲ相手二スルニハ充分ダ!」
「そうでなければ面白くない。骨だけの操り人形となった黒龍と戦うために修行をしてきたわけではないからな。黒龍、覚悟!行くぞ、ヴァイス!」
「おう、フドウ!」
巨体の黒龍、赤龍、白龍が対峙したすがたはまるで怪獣映画そのものである。
白龍ヴァイスが先制の冷凍息吹を吹き付けた。
黒龍の足元がパリパリと凍りつき黒龍の足を地面に張り付けた。
同時に赤龍フドウが舞い上がり黒龍に火炎を放った。
ドオーン!
フドウの火炎が黒龍に直撃する。
黒龍は微動だにせずフドウを見上げ叫んだ。
『効カヌゾ、火炎トハコウスルノダ!』
ゴァー!
黒炎が赤龍フドウに直撃する。
「うぁ!」
赤龍フドウはバランスを崩しながらも落下を免れた。
黒龍は氷付けになった足を気にもせず飛び上がった。
『妖精ヨ、あめいしあト黒龍王あすら二伝エヨ。我ガ貴様達ノ首ヲ食イチギッテクレル。』
「く、覚えてらっしゃい!」
ティアは魔人城の方へ飛んでいった。
『さて若き龍よ。』
「黒龍、さっきまでのたどたどしい口調は何だっんだ?」
『演出だよ。まあ、そんなことはどうでも良い。悪いがお前達には我の最後の戦いに付き合ってもらう。』
「最後とはどういうことだ?まあ、ここで俺達が倒すから最後ってことだろうが。」
『そうなるかもしれんが我にはあまり時間が無い。時おり、川の向こうから死んだじいさんが手招きをする幻覚が見えるからな。』
「それ、三途の川だろ!」
『元より、黒龍王アスラに一度殺されておるのだがゾンビとしてこの世に縛られていたからな。それが解けた今この世に留まっていられるのも時間の問題だろう。それまでの時間、我に付き合ってもらうぞ。』
「時間が来る前に三途の川の向こうに渡してやるよ。」
フドウとヴァイスは戦わなくてもいずれ力尽きる黒龍の最後の戦いに付き合うことにしたのである。




