第192話 モーリス軍の侵攻にゃ
マジリア国での会談の後、各国の王は各自のすべきことを内に秘めて帰国して行った。
今回、モーリス島に渡るのはローマシア軍は元妖精剣のシデンが率いる近衛騎士団百人を主軸に歩兵千人で構成されていた。
その中には元妖精剣フィーネと諜報部のデュークといった懐かしい顔ぶれもいた。
俺はコニャシア、ブリットとローマシア軍と共にモーリス島へ向けて海を渡る予定だったのだ。
理沙は最後まで一緒に行って戦うと言っていたがロン、ミック等とミシワール国のカザン王に預けてきた。
理沙を守りながら戦える相手ではないのである。
しかし、俺達が海に到達する前にモーリス島の軍勢がダリス国の北岸に上陸し、同時に神聖国フェリシアがダリス国の領内に進軍してきたのである。
ダリス国はモーリス島の軍勢と神聖国フェリシア軍に挟撃されることとなったのである。
「モーリス軍がダリス国の北岸に上陸、戦闘状態に入りました!」
俺達はローマシア軍と共にモーリス島へ渡る手筈であり、アリストン山の麓に差し掛かったとこであった。
「敵に先を越されたか!我々はこのままダリス国の北岸に向かいダリス軍と合流してモーリス軍を迎え撃つぞ。」
ローマシア軍の指揮官であるシデンは叫ぶと馬を走らせた。
「おー!」
兵達が一斉にシデンに続いて走り出した。
「来人!」
シデンが俺の乗った馬に自分の馬を併走させ、声を掛けてきた。
「何だにゃ?」
「来人、お前はこのままアリストン山で金龍ナーガの力を借りてモーリス島へ渡って背後から闇の女神アメイシアと黒龍王アスラを討ってくれないか?上陸したモーリス軍にはアメイシアの女神アメイシアと黒龍王アスラの姿は無いらしい。奴等はまだモーリス島にいるはずだ!」
「しかしこっちは大丈夫にゃのか?」
「心配するな、それより女神アメイシアと黒龍王アスラさえ倒してしまえばモーリス軍と言えどもローマシアとダリスの敵ではないさ。俺を信用しろ!」
「分かったにゃ!」
その時、上空から俺たちに向かって巨大な影が舞い降りてきた。
シデンとローマシアの兵達に緊張が走った。
俺はその影を確認して叫んだ。
「大丈夫にゃ、敵じゃないにゃ。」
巨大な影は赤龍形態のフドウであった。
「来人、よく帰ってきたな。我等も戦いに参加するぞ。」
雷の様な声でフドウが叫んだ。
更にフドウの背には修一、アリア、エリスの姿があったのだ。
エリスは俺のところまで飛んでくると得意げに言った。
「アリストン山の龍達もモーリス軍との戦いに参戦するわ。」
エリスはダリス国のアーク王に会った後にアリストン山の金龍ナーガの元へ向かっていたのである。
百頭近い龍が空を覆っていた。
「あの緑龍がマーリンだにゃ。青龍サラス、風龍マール、白龍ヴァイス、これだけの数の龍は流石に圧巻にゃ!」
「俺もいるぞ!」
修一がフドウの背で叫んでいる。
「おーい、フドウ!降りてきてくれにゃ!」
そう叫び馬を止めた俺の傍に赤龍フドウが降りてきた。
「何だ、来人。モーリスの連中をやっつけるのではないのか?」
「いや、あの中に闇の女神アメイシアと黒龍王アスラはいないらしいにゃ。そこで頼みにゃんだけど俺達をモーリス島へ運んでくれにゃか?今、直接、闇の女神アメイシアと黒龍王アスラを倒すチャンスかもしれないにゃ。」
「そう言う事なら一緒に行ってやろう。骨になったとはいえ黒龍を倒し因縁に終止符を打つのは龍族の仕事だ。」
「俺達も行くからな来人。」
修一もアリアと一緒に行く気満々である。
「それならヴァイスにも一緒に行ってもらうか。」
「よろしく頼むにゃ!」
「アリア、その男は何だ?」
そこにデュークが現れアリアに詰め寄った。
「何って、兄さん。この人は修一よ。」
デュークは見知らぬ男といるアリアを見て飛んできたのである。
「お兄さん、修一です。よろしく!」
「兄貴じゃなく兄さんって?それにお前にお兄さんと呼ばれる覚えはない。」
「何、言ってんのよ。放っといて良いわよ、修一。」
「来人、俺も行くからな。」
「俺は良いけど向こうは大丈夫にゃ?」
「それなら、もうシデンに言ってきている。大丈夫だ。」
「それにゃら、歓迎するにゃ。」
こうして、俺、ブリット、エリスと修一、アリアに加え、デュークが赤龍フドウと白龍ヴァイスに乗ってモーリス島に向かうことになったのである。