第189話 逃走するにゃ
巨大化したロンにまるでビルに登った大猿の映画の様に神殿の天辺に掴まっていた。
神殿の下の広場には王宮からの増援の兵が殺到していた。
「何だあのぬいぐるみの熊は?」
兵達は神殿の上にいるロンの姿に気付いたがその可愛らしさに危機感を全く持っていなかった。
ロンは俺達全員をひとまとめに抱き抱えると叫んだ。
「しっかり歯を喰いしばれよ!」
そしていきなり神殿から飛び降りたのだ。
高さにして、数十メートルはある位置から巨大な熊のぬいぐるみがダイブした。
地面にいた兵達はロンの大きさに気付き逃げようとしたが遅すぎた。
バフン!
ロンが地面に激突した音はまるでぬいぐるみを落とした様な軽い音であったが下敷きになった兵は皆、失神していた。
混乱し悲鳴をあげて逃げ惑う兵達を蹴散らしながらロンは街の外に向け駆け出した。
街を出たところでロンは俺達を地面に降ろすと元の大きさに戻った。
「俺はもう魔力切れで動けない。後は何とかしてくれ。」
「ロンは俺が担ごう。」
オルソンがロンを肩に担ぎ上げた。
「これからどうするんだ?」
「マジリアに向かうしかないにゃ。」
「このままマジリアに向かうのは危険だと思うよ。」
口を挟んできたのはベルガモットだった。
「どういう意味だ、ベルガモット?大体、何でこいつらを連れて来たんだよ。」
ソーマがベルガモットに喰ってかかる。
「だってシトロンはあんた等がマジリアから来たこと知っているんだよ。当然、マジリアに通じる街道には兵が配置されるんじゃない。」
「正論だな。」
「じゃあ、どうすればいいにゃ?」
「私に意見を聞くの?私は敵だよ。」
「敵の敵は味方って言うじゃない。」
理沙がベルガモットに言った。
「そう単純じゃないと思うんだけど。」
「そうかしら。」
「ベルガモットが言うことももっともにゃんで裏街道を行くにゃ。今度はガイドもいるしにゃ。」
「それなら任せて頂戴。」
「それとブリット、一足先にローマシアとミシワールにアメイシアの復活して黒龍王アスラと骨黒龍を従えていることと悪魔のことを伝えるんだにゃ。エリスはマジリアとダリスにゃ。」
「分かりました、御主人様。」
「分かったわ。」
「俺達は街道を避けてマジリアに向かうにゃ。落ち合うのはアリストンの金龍ナーガのところにゃ!」
ブリットとエリスはそれぞれ飛び立ち、俺達はコスロの蜃気楼で身を隠しながらマジリアへと向かった。