第186話 メフィストの狙いにゃ
アメイシアはメフィストに力を吸い取られ徐々にその姿を薄くしていった。
そして、徐々にメフィストの魔力が増大していく。
「何かやばいにゃ!皆でメフトいやメフィストを止めるにゃ!」
俺は武御雷を抜くとメフィストに斬りかかろうとした。
しかし、俺より先に動いたのはシトロンだった。
シトロンはアメイシアとメフィストの間に飛び込んだのだ。
「うおーっ!」
シトロンは魔法で障壁を作り、メフィストの黒い粒子を断ち切った。
薄くなっていたアメイシアの姿が元に戻る。
自由になったアメイシアの視界に入ったのは座り込んで放心状態であるグミライトライムであった。
「この際、贅沢は言ってられない。」
アメイシアはグミライトライムの中に飛び込んだ。
「いや、止めて……。くそ、こんな身体でも無いよりましか。」
グミライトライムの抵抗は無いに等しく、アメイシアに身体を奪われ、その身体を漆黒の鎧が覆う。
「私の邪魔をしないで欲しいですね。」
メフィストはアメイシアを逃したが慌てること無く余裕の表情を浮かべていた。
「裏切ったか、メフィスト。しかし召喚された悪魔は召喚者に背けないはずでは……まさかダビュロスが裏切ったのか?」
シトロンはメフィストを睨みつけながらつぶやいた。
メフィストはダビュロスが召喚したはずであったからである。
「確かに召喚した時に悪魔の身体には召喚者に背けないように制約が刻まれます。そのため召喚された悪魔は召喚者に背けません。」
「では、やはり、ダビュロスが!」
「彼は牢屋の中で廃人同然ですよ。それに、私は召喚されたのでは無く、自分の意思でこちらの世界に来たのです。」
「自分の意思だと?」
「そう、ダビュロスが悪魔を召喚するために開いたゲートを使って召喚されたふりをしたんですよ。召喚された下級悪魔を消し炭にしてね。」
俺はメフィストがシトロンとのやり取りに気を取られている隙にフェリシアを捕らえていた黒い粒子を武御雷で断ち切った。
「すみません、来人。」
「フェリシア、取り敢えずコニャコに避難するにゃ!」
「マタ俺ニャンカ、仕方ガニャイニャンネ。」
コニャコが不服そうではあるが了承する。
「すみません、コニャコさん。迷惑かけます。」
フェリシアはコニャコの中に入っていった。
メフィストはアメイシアの時と同じ様子で慌てること無く余裕の表情を浮かべていた。
「2人の女神がこの程度でしたら、この世界にそれ程強い者はいないのでしょうね。アメイシアの力はあらかた頂きましたし、もう用は無いですね。退散することにしますか。」
「待つにゃ!メフィスト、お前の狙い何なんだにゃ?」
「私は面白ければ何でも良いんですけど、上司に地獄とこの世界をつなぐ大きな通路を開く様に命令されているんでね。」
メフィストはシトロンに向かって黒い炎を放った。
黒い炎は蛇の様に伸びシトロンに絡みついた。
「ぐおーっ!」
ゴロゴロ!
シトロンは転がって燃える服の火を揉み消したがダメージで起き上がることが出来ない。
「邪魔してくれた御礼ですよ。次は用済みの女神さまか目障りな猫ちゃん達に消えてもらいますかね。」
ドーン!
その時、大きな音と振動と共に儀式の間の屋根が吹き飛ばされた。
空いた屋根の穴から頭を突っ込んできたのはスカルドラゴンと化した黒龍であった。