第176話 シトロンと理沙にゃ
寝心地の良い、ベットの中で理沙は、目覚めた。
軽い頭痛がするが身体の何処にも怪我はなく、手足も拘束されてはいない。
周囲を見渡すとそこは、ベットの他にテーブルと椅子が1つずつの質素な部屋であることが分かった。
「目が覚めたか?」
理沙は、声を掛けられ、少し驚いた。
「誰?」
「理沙、こんな事をして、すまないと思っている。」
声の主は、シトロンだった。
「私をどうするつもりなの?」
理沙の問いにシトロンは、理沙と目を合わすことなく話し始めた。
「俺達、フェリシアの民は、古来から光の女神フェリシア様を崇めて生きてきた。フェリシア様は、この世界における光の神だ。遥か昔、二人の姉妹神が龍の支配する、この地を訪れた。光の女神であるフェリシア様と闇の女神アメイシアだ。フェリシアさまが人に知恵をアメイシア様が魔人に力を授けた。」
「魔法大学で聞いたわ。この世界の創世の伝説でしょ。」
「光の女神フェリシア様と闇の女神アメイシアは、意見の食い違いから争うこととなり、結果としてお互いを消滅させることとなったとされている。しかし、フェリシアもアメイシアも完全に滅んだという訳ではいない。俺達は、フェリシア様のお告げで近い将来、闇の女神アメイシアが復活することが分かったんだ。」
「それと私と何が関係あるの?」
「関係あるんだよ、理沙。俺達は、アメイシアに対抗するためにフェリシアの復活させることにした。その為にフェリシア様の肉体となる依代が必要だ。そして、依代として異世界から召喚したのが理沙、君なんだ。」
「ちょっと、待って。私、そのフェリシアの生贄的なものなの?」
「死にはしない、だた、身体をフェリシア様に提供してもらうことになる。」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って、そうしたら私はどうなるの?」
「アメイシアを倒したら、解放する。」
いや、それは、ちょっと疑わわしい。
「ごめん、お断りします。電撃魔法!」
理沙は、飛び起きると同時にシトロンを魔法で気絶させようとした。
しかし、シトロンにかざした手のひらからは、何も魔法は発動しなかった。
「魔法封じの腕輪さ、寝ている間に、魔法は封印させてもらったよ。」
よく見ると両腕に金属製の腕輪がはめられている。
バキッ!
理沙は、そのまま、右の拳をシトロンの顔面に叩き込み、入口のドアに向かって走った。
ガチャ、ガチャ!
「開かない、鍵が掛かっている。」
扉は、鍵がかけられていた。
厚い木製の扉は、とても理沙の力で壊せるようなものでは無かった。
「いきなり、殴るとは、予想外だったよ。」
シトロンが鼻血をハンカチで拭きながら言った。
「偉大な女神になれるんだから栄誉ある役目だよ。」
「それなら、あんたがなればいいじゃないの!」
「抵抗すると辛い目に遭うから諦めて運命を受け入れてもらいたかったんだけどね。」
「私は、運命なんて信じない。」
シトロンは、理沙の頭に手をかざした。
「残念だよ、3日後の満月の夜が来るまで寝ててくれ。」
理沙は、糸が切れたマリオネットの様に意識を失った。
ガチャ!
扉が開きベルガモットとキノットが顔を出した。
「だから説明しても納得するわけないじゃない。」
「俺なら喜んでこの身を差し出すのだが。」
「それは、あんただけだよ。」