第175話 黒龍と黒龍王アスラにゃ
モーリス島、かつて魔人の王が築いた城に黒龍は、横たわっていた。
金龍との戦いの後、力を封じられ、この地まで逃げてきたのだ。
黒龍は、残った力で城に何人も入れない結界を張り復活の機会をうかがっていたのである。
黒龍は、まどろむ意識の中、人の気配を感じて頭をあげた。
そこには、黒龍王アスラと闇の妖精ティアの姿があった。
「黒龍様、ただ今戻りました。」
「ティアか、龍珠は、手に入れたのか?その者は、誰だ?」
「こちらのお方は、アスラ様にございます。」
「人等に興味はない。龍珠はどこだ?」
「アスラ様が龍珠、あなた様の半身です。」
「我の半身だと、なるほど、我の力を感じる。しかし、私以外の者の力が混ざっているな。龍とも人とも違う…何だこれは?」
「分かるのか。流石、伝説の黒龍だな。」
「この気は、アメイシア、邪神アメイシアか!なぜ、我の半身にあの女の力が…。ティア、貴様、あの女に寝返っていたか!」
「寝返るも何も始めから私は、あのお方の僕ですわ。」
「おのれ!」
ゴァー!
黒龍は、いきなりアスラに向かって炎を吹いた。
アスラは、黒龍の炎の中を平然と立っている。
「何だ、我の炎が効かんとは!」
「私は、お前でもあるのだ。自分の炎で焼ける訳がなかろう。」
「おのれ!」
黒龍は、アスラを噛み砕こうとした。
ガシッ!
アスラは、黒龍の牙を片手で受け止めた。
「伝説の黒龍もこんなものか。では、残りの半身の力をもらい受ける。」
黒龍王アスラは、右手を黒龍にかざした。
「何だと、や、やめろ!」
黒龍から光の粒子か黒龍王アスラの手のひらに吸い込まれていく。
「やめろ、やめてくれ…。」
黒龍の身体は、しぼみ、やがて骨だけとなった。
「黒龍よ。もう少し役に私の立ってもらおうか。」
アスラが手のひらをかざすと黒龍の屍が黒い霧に包まれた。
ズズズズッ!
グギャアー!
黒龍の屍は、骨龍として起き上がってきた。
黒龍としての意識はなく、ただアスラの操られるだけの存在であった。
「アスラ様、後は、あの方の復活を待つだけですわ。」