第174話 女神の依代にゃ
神聖国フェリシアは、国の名前の由来でもある女神フェリシアを崇める神聖国家である。
神聖国フェリシアの王宮の地下に設けられた女神の神殿においてフェリシア国女王であり、神官長でもあるグミライトライムは女神に祈りを捧げてた。
そこに1人の女性神官が入ってきて、彼女の後ろに膝を付いた。
「グミライトライム様、依代の娘を確保したとの連絡が入りました。2日程でシトロンが連れて戻るとのことです。」
「そうか、ご苦労、下がってよい。」
グミライトライムは、若干17歳で少女である。
フェリシアにおいて唯一、女神と会話の出来る人物であり、先王の亡くなった後、15歳の若さで女王を継承したのが2年前のことである。
「女神フェリシアよ。異界から召喚した娘をマジリアにて捕らえました。御不自由でありましょうがもうしばらくの御辛抱を。」
グミライトライムは、幼さの残る顔に冷たい笑みを浮かべた。
理沙が目覚めたのは、狭い箱の中であった。
ガン!
「痛!何、何なのよ。ここ、何処よ。」
理沙は、痛む頭をさすりながらつぶやいた。
ガチャ!
箱の蓋が開けられ、覗き込んだのキノットだった。
「あら、起きちゃったのね!」
「キノット、ここは、私、何で?」
「ごめんね、理沙。また寝ておいてくれるかな!」
プシュー!
キノットが手にした小さなキノコから胞子が飛び出し、理沙に降りかかった。
しまった、そう言えばさっきシトロンから何かをかけられて、気が遠くなったんだった。
「しまった、気が遠くなる。来人、助けて!」
理沙の視界は、急激に暗くなっていった。
国境に終結していたフェリシア軍は、マジリア軍を牽制しながら後退していき、直接の戦闘は無かった。
マジリアからの抗議の使者にフェリシアからは、軍事演習であったと開戦の意思はないの一点張りで理沙を含めシトロン、ベルガモット、キノットについても知らぬ存ぜぬであった。
「急いで理沙を助けに行くにゃ!」
俺は、マリーダ女王とダブリンドア学長に詰め寄っていた。
俺が理沙を助けに行こうとした時に2人に止められたのである。
「国境付近の町で若い男と女の子2人が馬車で国境を越えたと情報が入っています。」
「尚更、急いで追いかけるにゃ!」
「しかし、国境は、フェリシア軍によって封鎖され、我が国としては、表立って行動が出来ないのです。私も来人に救われた恩もありますので特別に救出隊を編成しました。来人は、その部隊を率いてフェリシアに潜入してください。」
「分かったにゃ!」
救出隊は、俺とブリット、エリス、ロン、ミック、魔法大学から、オルソン、ソーマ、メイヤ、オスロが志願してきた。
「申し訳ありませんがマジリアの兵は、フェリシア軍の侵攻に備えて動かすことが出来ません。」
「マリーダ女王、それは、分かってるにゃ。それに少人数の方が侵入しやすいにゃ。」
「来人、出来ることならわしも着いて行きたいが足手まといにしかならん。頼んだぞ。」
マリーダ女王、ダブリンドア、マーシャルの3人から見送られ、俺達は密かに王都マジタリスを後にした。




