第171話 マタウの戦いにゃ
マタウのボールは、金属製の玉だった。
「分かった、でかい玉入れってことだにゃ!」
俺は、素早く雷神化をすると玉を持ち上げた。
ガチャン!
その時、玉から8本の脚が雲の様に生えた。
「危ない、御主人様!」
バキッ!
8本の脚が地面を抉る。
「玉から脚が生えたにゃ!」
俺は、咄嗟に玉を離すと飛び退いて間一髪、8本の脚の先に生えた爪をかわした。
「来人くん、マタウがただの玉入れと思ったら怪我をするよ。」
「来人は、マタウ、初めてだったのね。ボールは、抵抗して攻撃してくるわよ。」
理沙とシトロンが声を掛けてきた。
「そんなことは、最初に言うにゃ!」
ボールの下の地面が盛り上がり、ゴーレムが現れるとボールの脚をつかんだ。
「シトロン、今回の首席は俺達が取らせてもらうよ。」
背後からの声に振り替えるとソーマが立っていた。
「ソーマのゴーレムか!」
ゴーレムは、ボールの爪が突き刺さるのもお構い無しに力任せにボールを振り回し上空に投げあげた。
ボールは、かごめがけて飛んでいく。
「そうは、いかないよ。水弾丸!」
メリヤの放った水の弾丸に軌道が逸れ地面に落ちた。
「にゃるほど、要領は分かったにゃ。」
スキンヘッドのオルソンが落ちたボールに飛び掛かり組み付いた。
8本の脚の爪がオルソンを襲う。
ガキン!
「鋼鉄化!」
鋼鉄の身体となったオルソンの身体は、ボールの爪を弾き返した。
オルソンは、ボールを抱えあげるとかごでは無く水平に投げた。
バキッ!
ボールは、砲弾の様に飛んでいきオスロを弾き飛ばした。
「オスロ!オルソンやったわね!」
メリヤがオルソンを睨み付ける。
「反則にゃ!直接攻撃は、禁止にゃんだろ!」
俺の抗議にオルソンは、鼻で笑った。
「直接攻撃?ボールを使った間接攻撃は、ルールで認められた戦法だぜ。」
これは結構、大変な競技かもしれない。
「オルソン、よくも弟をやってくれたわね。水蛇流!」
メリヤのかざした両手から現れた水の大蛇がボールをくわえて、オルソンに向かって突き進む。
「おっと、メリアこれは、タッグ戦たぜ。」
ソーマのゴーレムがメリアの水の大蛇を殴りつけた。
バシャ!
水の大蛇が砕け、ボールが転がる。
「猛吹雪!」
シトロンの氷魔法が水を被ったソーマのゴーレムを凍りづけにした。
「俺のゴーレムが!」
「くそ、シトロンか!フェリシアの奴のくせにでかい顔しやがって。」
オルソンが再びボールの足を掴むとシトロンめがけて投げつけた。
ボールがシトロンに届く前に横から飛び出した大きなチワワの姿のゴーレムがボールの足を咥えるとそのままかごに叩き込んだ。
ピー!
ゴールを告げる笛の音が響き渡る。
5メートルはあるチワワのゴーレムは、理沙の隣に並ぶと激しく尻尾を振った。
「チビ、おりこうさんね。」
理沙は、チビの頭を撫でながら言った。
チビは、理沙が家で飼っていたチワワの名前である。
「あれは、チビにゃのか!って、ゴール、決めちゃったにゃ!」
「これで、私とシトロンの一抜けね。」
シトロンと理沙が手を振りながら競技場がから退場していった。
「くそ、先を越された!」
オルソンが悔しそうに叫んだ。
「悔しがる前にシトロンを攻撃してにゃいでゴール狙えよ。」
「何だと、初級クラスのくせに、お前ら何もしてないだろ。」
俺の小声の突っ込みは、しっかりオルソンの耳に届いていた。
しかし、初級クラスの俺とブリット、ベルガモットとキノットの2組は、今のところ、対して競技に参加していないのも事実である。