第17話 闇ギルドの襲撃を受けたにゃ
のどかな晴れた昼下がり、街道をガタゴトと音をたてながら馬車が走っている。
栗毛の1頭の馬に引かれた馬車の屋根の上には一匹の鎧をつけた猫が座っている。
その猫はにゃんこ騎士こと来人だった。
馬車の屋根の上は、来人の指定席である。
御者席にはシデンが座って手綱を取っている。
いつもはのんびりと寝ている来人だったが今回は周囲の臭いに気をつけて敵の接近に警戒していた。
来人達、妖精剣のメンバーと国軍諜報部のデュークとアリアの6人は、モルドーの町から街道を北に進んだところにあるローマシア国の首都リーンに向かっていた。
積荷はブラックポーション「狂気の雫」とリーンの牢へ移送の為、ゴドーを乗せていた。
デュークの話では『ゴドーがつかまったことは、既に闇ギルドの知るところになっているだろう。証拠隠滅のため、何らかの動きがあるかもしれない。』とのことであった。
木も草も生えていない岩だらけの山道に差し掛かったとき巨大な岩が道の真ん中をあり馬車の行く手を遮った。
岩は明らかに自然の形ではなかった。
「気をつけろ、敵だ。」
シデンの警戒の声に全員馬車から飛び降り剣を抜いて構えた。
すると、巨大な岩が動き出した。
高さ5メートル程の岩の巨人に姿を変えたのだ。
「ロックゴーレム!」
ファンタジーでは定番だが実際目の前にして相手をするとでかい怪獣である。
「おとなしく、積荷を渡してもらいましょうか。しかし、私としては、少し、抵抗してもらえると楽しめるのですけどね。」
甲高い声がロックゴーレムの方から聞こえてきた。
良く見るとロックゴーレムの右肩に黒尽くめの服をきた長髪の痩せた男が乗っていた。
「闇ギルドのゴーレム使いがいると聞いていますがあんな巨大なゴーレムとは。定石どおり、ゴーレム使いを倒してゴーレムを無力させるしかないですね。」
デュークが肩を竦める。
「ゴーレムの方は俺にまかせるにゃ!あんなのでかいだけで動きはスローだにゃん。」
「それじゃあ、ゴーレムは来人にまかせて俺とシデンで黒尽くめを相手しよう。フィーネは弓で牽制してくれ。エリスとアリアは馬車の方を頼む。」
「了解した。来人頼むぞ。」
「援護は任せておいて!」
「エリスよろしく!」
「まかせてよ!」
俺は、ロックーゴーレムに突撃をすると覚えたての魔法でこぶし大の炎を作りゴーレムの顔めがけて打ち込んだ。
ドォン!
派手な音と炎を上げたがロックゴーレムの顔は無傷だった。
黒尽くめの男は投げ出されたが空中で身軽に回転し地面に降り立った。
「いきなり、派手な攻撃ですね。」
黒尽くめがニヤリと笑いながらつぶやいた。
「ゴーレムなどゴーレム使いを倒せばすむことだ。」
そこにデュークが斬りかかった。
黒尽くめの男は細身の剣レイピアを抜くとデュークの剣を受け止めた。
デュークは変幻自在の二刀流を駆使し次から次への黒尽くめの男に打ち込んでいく。
しかし、黒尽くめの男は軽々とデュークの攻撃を受け流す。
『この男、ゴーレム使いにしては強過ぎる。』
デュークは自分の見立てが甘かったことを実感した。
しかし、シデンと二人であれば倒せない敵ではない。
そこにシデンが黒尽くめ目掛けて剣を打ち込んでいった。
「デューク、手こずっている様だな。」
「何を言うか、さっさと手を貸せ。」
シデンとデュークは連携して、黒尽くめの男に打ち込んでいく。
「危ない、危ない。」
黒尽くめの男はさすがに攻撃まで出来ないがシデンとデュークの二人掛かりの剣を難なくさばいている。
「二人ともなかなか楽しませてくれる。褒美に私の名前を教えてやろう。私の名はギル。」
「ギル、黒い疾風のギルか。」
黒い疾風のギルは闇ギルド所属の暗殺者だ。
レイピア使いで達人クラスに匹敵すると言われる。
狙われたもので生き残っているものはいないと恐れられている。
闇ギルドの中で5本の指に入る有名人だ。
「二人とも修行すれば、まだまだ強くなれるのに残念だ。」
すると、バトルマニアのシデンは、うれしそうに笑みを浮かべていた。
「黒い疾風のギル、相手に取って不足はない。」
「おいおい、楽しめる相手じゃないだろう。」
そう言う、デュークもまた笑みを浮かべていた。
この男もシデンと同じバトルマニアであった。