第169話 第1の競技にゃ
「それでは、魔法競技会を開催する。知っていると思うが競技会の内容によりクラス換えを行うので精一杯がんばりな!」
学生達の前でダブリンドア学長が競技会の開催を宣言した。
「それじゃ審判長のこのマーシャルが競技の説明をする。まずは、全出場者で第1の競技を行い、上位の8組が次の競技を行う。第2の競技の上位3組で決勝じゃ!」
マーシャルは、この魔法大学で講師になっていた。
「第1の競技は、芸術だ。方法は、各自に任せる。審査は、わしとダブリンドア学長で行うから、わし達を唸らせたものから、先着8組が第2の競技に出場じゃ!何度でも挑戦してくれ、ただし、制限時間は1時間。開始!」
学生達は、バタバタと部屋の隅に行き、相談を始めた。
「御主人様、いかがなさいますか?」
「早い者勝ちにゃ、取り合えず色々やってみるにゃ!」
シトロンと理佐がマーシャルの前に出ていった。
「シトロン、理沙組、審査お願いします。」
「お、流石に早いな。やってくれ!」
「では、氷造形魔法!」
シトロンのかざした両手から沢山の氷の蝶が現れた。
「虹照明魔法!」
理沙が上に向けた右手から七色の光が氷の蝶達を照らす。
部屋の中を七色に輝く蝶が飛び回り幻想的な美しさをつくる。
「お、おー!」
「きれい!」
誰とは言わず感嘆の声をあげる。
「文句無しの合格じゃ!難しい魔法を使う必要は無い。使い方次第で初歩の魔法でこれだけのことが出来るのじゃ!」
「はい、はい、はーい!次、ベルガモット、キノット組やりまーす!」
「土造形魔法!」
ドーン!
「ぐはっ!」
マーシャルが仰け反った。
マーシャルの前には、実に色っぽいポーズのダブリンドア学長の像が現れていた。
「どうよ!合格でしょ?」
「くっ、ご、合格。」
「やったー!ベル。」
「アイデアの勝利だね。」
アイデアと言うかダブリンドアとマーシャルの力関係の勝利である。
学生達が先を争ってマーシャルの前にダブリンドア学長の像を建てていく。
「人の真似をしてもダメじゃ!学長の像は、もう禁止じゃ!」
学生達が舌打ちをしながらマーシャルの側を離れていく。
順当に上級クラス2組が多彩な魔法を駆使し、マーシャルから合格切符を受け取った。
「残り10分じゃ、8組にならんでも延長せんぞ!」
「ブリット、俺に考えがあるにゃ。部屋を暗く出来にゃいか?」
「御主人様、暗くすれば良いのですね。任せて下さい!」
「次、来人、ブリット組、挑戦するにゃ!」
「よし、やってみろ!」
「ブリットやるにゃ!」
「了解、御主人様!暗闇夜!」
部屋が一気に暗くなる。
「何と暗闇をつくるとは。」
どうやっているか分からないがブリットが部屋を暗くした。
パチッパチパチッ!
暗闇を小さな灯りが照らす。
俺は、指先に電気を集中させ火花を起こしたのだ。
「これ、線香花火ね!」
理沙の声が闇の中から聞こえた。
ヒュールル、ドーン!
更に火の玉を破裂させ、次々と夜空で咲く大輪の花火を表現した。
ヒュールル、ドーン!
俺は、気の済むまで魔法の花火をあげ続けた。
「私、家に帰れるのかな…。」
理沙は、元の世界のことを思い出し、涙ぐんだ。
「お、もう時間じゃな。来人、ブリット組、合格じゃ!今度は、ゆっくり本当の夜空で見せてもらえるか、来人!」
「もちろんにゃ!」
結局、俺が時間一杯使っていたせいで次の競技に進めたのは5組だけだった。