第162話 大魔法使いダビュロスにゃ
ダビュロスを中心に吹き荒れる魔力の渦は、研究室の中を暴れまわっていた。
その場に立っているのは、ダビュロス以外は、俺とメフィストだけだった。
「大魔法使いダビュロス様を無視して何様のつもりだ!」
ダビュロスは、俺とメフィストが自分を無視して話をしていることにプライドを傷付けられ憤慨していた。
「ダビュロス、もう止めるにゃ!」
「何を言う、この力があれば金龍ナーガすら恐るるに足らず!もう、誰の力も借りずとも1人でもこの世界を手に入れることが出来るわ!」
「ダビュロス、後は、あなたのご自由に!」
メフィストは、そう言い残して、かき消すように消えた。
「メフィストめ、逃げたか!」
ダビュロスは、残った俺に両手を向けると凄まじい衝撃波を放って来た。
バンッ!
凄まじい衝撃が俺を襲う。
俺は、衝撃で壁に叩きつけられるところを四肢を使ってうまく衝撃を逃がし、壁を蹴ってダビュロスに斬りかかった。
「ダビュロス、覚悟にゃ!」
「小賢しい!」
ダビュロスは、衝撃波を連続で放って来た。
『来人、あいつ、魔力は、でかいが戦いは、ド素人だ!』
武御雷の声が頭の中で響いた。
「俺もそう思ってたにゃ!」
俺は、余裕でダビュロスの衝撃波をかわしてていく。
「何故だ?何故当たらないのだ?」
俺にとってダビュロスの攻撃は、単調で簡単に予測することが出来たのだ。
ダビュロスは、焦り更に魔力を増大させていった。
『来人、何か様子がおかしいぞ。』
ダビュロスの魔力が次第に弱くなっていく。
「ダビュロスの奴どうしたにゃ?」
既に魔力による渦も治まっていた。
「ダビュロス、覚悟しろ!」
渦が治まりやっと研究室に騎士や兵達が飛び込んできた。
「もう、終わったにゃ…。」
彼らが見たのは、部屋の中心で座り込んだ1人の老人の姿だった。
「これは、一体どういうことなんだ?」
「どうやら、生命力を魔力として放出していたようにゃ。」
「私は、一体何をしていたのだ。こんなはずでは…ゴボ、ゴホッ!」
ダビュロスは、呟いたが誰も答えようとはしなかった。
「ニャー!」
「来人、終わったようだな。」
ミックとコニャコが俺の側にやって来た。
先程、ダビュロスに吹き飛ばされて研究室の外に出ていたのである。
「でも、ダビュロスもこうなるとちょっとかわいそうにゃ。」
「まあ、自業自得ってことだ。後は、マリーダ女王とダブリンドア学長に任せるとするさ。」
「そうだにゃ、それよりメフィストと名乗った悪魔のことが気になるにゃ。」
「私のことがそんなに気になりますか?」
「ニャー!」
突然、背後からの声に俺は、声をあげて驚いた。
振り向いた俺の目の前にメフィストが澄まし顔で立っていた。