第158話 武御雷の宝玉にゃ
ゴロゴロゴロ!
「ひーっ!止めてくれ、目が回る。」
実際、目を回されていると言うか転がされているのだが、じゃれる雷獣にゃんこにバックベアード卿は、ボール扱いされていた。
そこに宝物庫の番兵が応援を連れて戻ってきた。
「バックベアード卿!」
ニャ!
雷獣にゃんこは、いたずらっぽい笑みを浮かべバックベアード卿を兵達に向かって転がした。
ゴロゴロゴロ、パッカーン!
まるでボーリングのピンの様に兵達が吹き飛ばされた。
「おのれ、この猫が!」
バックベアード卿が目を血走らせなから悪態をついた。
「もう許さんぞ!」
カッ!
バックベアード卿は、催眠光線ではなく、破壊光線を放ってきた。
ミギャ!
雷獣にゃんこが破壊光線を受けて悲鳴をあげる。
いくら素早い雷獣にゃんこでも、狭い通路では思うように避けられない。
「来人、宝玉をやっと見つけたぞ!って、何が起こってるんだ!」
その時、ミックが物庫につながる通気孔から顔を出した。
ミックが目にしたのは、巨大な猫と大きな目玉、倒れている兵達であった。
「来人は、何処にいるんだ?あれは、騎士が言っていた目玉の化物だな、あの巨大猫は…」
ドスン!
その時、バックベアード卿の放った光線を避けようとした雷獣にゃんこが宝物庫の扉にぶつかった。
「うわっ!」
衝撃でバランスを崩したミックは、通気孔から転げ落ちてしまった。
パサ!
何とミックが落ちたのは、雷獣にゃんこの背中の上だった。
ニャー?
「ひっ!」
ミックは、雷獣にゃんこの背中から振り落とされないように必死にしがみついた。
『ミック、ミック!』
「だ、誰だ。俺に話しかけているのは?」
『俺っちは、武御雷、来人の剣だ。』
ミックは、偶然にも雷獣にゃんこの背中の武御雷にしがみついていたのだ。
「そう言えば来人が剣が喋るって言っていたな。」
『今、来人は、あの目玉の化物の力で意識を失ったせいで暴走している。』
「ってことは、やっぱりこのでかい猫が来人なんだな!」
『ミック、宝物庫から持ってきた宝玉を俺っちの柄の穴にはめてくれ。来人のことをなんとかしてみる。このままでは、いずれ雷獣にゃんこもやられてしまう。』
「よし、柄の穴に宝玉をはめればいいんだな。」
『急いでくれ!』
ミックは、素早く持っていた宝玉を武御雷の柄の穴にはめた。
『来た、来た、来たー!久しぶりのこの感覚、力がみなぎるぜ!』
武御雷の柄にはまった宝玉が黒色から澄んだ青色に変わり、中の稲妻の様な光が激しくなる。
ピカー!
武御雷の刀身が光り輝き、更にその光は雷獣にゃんこにも拡がった。
「ぐわ、ま、眩しい。」
バックべアード卿が激しい光に目を背けた。
光が次第に収まり、そこに立っていたのは、刀身の光り輝く武御雷を構えたにゃんこ騎士の来人だった。