第148話 飛べない猫はただの猫にゃ
ズバッ!
俺はダビュロスが顔を出して覗いていた場所を切り裂いた。
俺の思った通り窓の様な場所は造りが弱かったのだ。
俺は床を切り裂いた勢いでそのまま開けた穴から上に登った。
「にゃんこの身軽さを舐めてもらっては困るにゃ!」
俺が一人で気取っていると廊下に通じる扉が開いた。
「何の音だ!」
部屋に入ってきたのは俺達を部屋に案内した騎士だった。
「にゃ!」
「お前、どうやって!」
次の瞬間、俺は騎士の後ろを取り剣を喉元に当てた。
「声を出すにゃ!大人しく、下にいる連中を出すにゃ。下手な真似をしたら、分かってるにゃ!」
俺は騎士の耳元で囁いた。
騎士は、震えながら頷くと入口付近の壁のレリーフをつまむとカチリと回した。
ゴトンゴトン!
石が動く音がして下に続く階段が現れた。
「ほう、隠し階段とは驚いたにゃ!」
「流石、御主人様!おや、その騎士は見覚えがありますね。」
ブリット、マリーダ女王が階段を登って来る。エリスは、ブリットの髪の毛にしがみついている。
「女王が逃げたぞ!」
騎士が剣を喉元に突きつけられているにもかかわらす叫んだ。
「にゃ、こいつ!」
ガン!
俺はすかさず騎士に手刀を打ち込み気絶させた。
「御主人様、人が集まってきます。」
大勢の人の声と甲冑の触れあう金属音、そして足音が近づいてくる。
「こっちにゃ、マリーダ女王!」
俺達は音のしない方に向かって走り出した。
「あのう、すみません。」
「何だにゃ?」
「そっちに行くと見張りの塔の上にしか行けないんですけど…。」
「にゃんだって!そんなことは早くいうにゃ!」
しかし、既に近くから足音が迫っている。
「とにかく、もう先に進むしか無いにゃ!」
俺達は、通路の突き当たりの長い螺旋階段を登り詰め見張り用のベランダに出た。
ベランダから眺めは、素晴らしく街とその周辺が一望できた。
「あれが魔法大学ね。あっ、来人、あそこ見て!ダビュロスが魔法大学に向かっているわ。」
エリスが指差す方を見ると大通りの向こうに大小の塔が突き出た実に奇妙な建物が建っていた。
その魔法大学の建物に100人程の騎士の騎士と魔法使いの一団が向かっているのだった。
その集団に先程のちょび髭眼鏡のダビュロスがいた。
「ブリット、女王を抱えて飛べるにゃ?」
「それは大丈夫ですが御主人様はいかがなさるのですか?」
「飛ばない猫は、ただの猫にゃ!」
俺は、そう言うとベランダから飛び降りた。
クルクル!
「そう、俺は猫でもただの猫じゃにゃい。にゃんこ騎士なのにゃ!」
スタッ!
塔の高さは50メートル、しかし俺は器用に空中で回転すると全身の関節と柔軟な筋肉を最大限に使って着地の衝撃を吸収した。
「ブリット、先に女王を連れて魔法大学にいくにゃ!」
「承知しました。御主人様!」
ブリットはマリーダ女王を抱えると魔法大学に向かって飛び立った。