第146話 落とし穴に落とされたにゃ
番兵が連れていた騎士は無愛想に俺達を王宮の中に招き入れた。
「付いて来い、案内する。」
「何か、感じ悪いね。」
エリスが俺の耳元で囁いた。
「し、聞こえるにゃ。」
確かにマリウス王の紹介状を持ってきた俺達に対してぞんざいな扱いをしている様な気がしていた。
「この部屋で待て。」
俺達が案内されたのは10畳程の椅子も何もない部屋だった。
「ちょっと、こんなとこで待たされるの?」
バタン、ガチャ!
俺達が部屋に入ったとたん騎士は俺達を部屋に残し入口の扉を閉めて鍵を掛けてしまった。
ドンドン!
「何をするにゃ。何で俺達をこんなところに閉じ込めるにゃ。」
バクン!
古典的な罠であるが俺達を下に落とすために床が開いた。
「空を飛べる私に落とし穴など無意味です。」
エリスとブリットは羽を広げて宙に浮いた。
俺はブリットに抱えられている。
「そうそう、無意味よ!」
エリスが得意げに繰り返したとたん部屋の壁が青く光りだした。
「フン、空を飛べる者がいることも当然、想定内なのだよ。」
ドアの外で先ほどの騎士の声が聞こえたとたん、俺達は下に向けて引っ張られるように一気に高度を下げっていった。
俺達が落ちると同時に床は頭上で閉じられた。
バタン!
ストッ!
かなりの高さであったがブリットは緩やかに降下して着地した。
周りを見渡すと壁が10畳程の石づくりの部屋で石が青く光っており、部屋の中をぼんやりと照らしていた。
「すみません、御主人様。この青く光る石が魔力の使うのを妨害しているようで力が出ないです。」
「大丈夫にゃ。えっと、エリスは?」
「ここにいるわよ。」
「エリスも飛べなかったのにゃ。しかし、とりあえず怪我は無いようで良かったにゃ。」
「あのう…。」
「にゃー!」
俺は、突然、背後の暗がりから声を掛けられ思わず叫んでいた。
「あのーすみません、驚かせてしまいましたか。」
良く見ると暗がりに座り込んでいたのは頭にティアラを付け紫色のドレスを着た上品な感じの美人だった。
年の頃は20代後半って所だろう。
「びっくりしたにゃ、先客がいたとは気がつかなかったにゃ。」
「すみません、私も寝てましたので気がつかなかったのでしょう。」
「寝てたの?」
「えへ、こんなところじゃすることなくて。」
美人であるが少し天然な感じのする女性である。
「それで、あなた方は何故、ここに?」
「って言うか、こっちが聞きたいにゃ。マリーダ女王に会いに来たらいきなり落とされたにゃ。」
「私に会いに来たのですか。」
「え、あなたがマリーダ女王にゃ!」
「ええ、私がマリーダです。」
何と落とし穴の下で俺達が会ったのはマジリアのマリーダ女王だった。