第143話 ちびナーガにゃ
「あんた、何してんのよ?」
金龍ナーガの頭の後ろにいた小さな龍にエリスは声を掛けた。
「えっと、俺は…。」
「ナーガ様。もうばれたんだから、やめましょうよ!」
ヴァイスが声を掛けてきた。
「ナーガ様って、あんたが金龍ナーガなの!」
「わ、悪いか…俺がナーガで!」
パタパタ
飛んで降りてきたのは小さな龍で金色の身体をしていた。
「これ、作り物よ!」
エリスが大きな金龍ナーガを叩いて言った。
「それじゃあ、このかわいらしい龍が本物のナーガ様なの?」
アリアが驚きの声をあげた。
「だから俺がナーガだと言っているじゃないか!」
「でも伝説の金龍ナーガがこんなに小さな龍だなんて…!」
「その事については俺が説明しよう。」
ヴァイスが語り始めた。
「その昔、邪悪な黒き龍が現れ、我々の住むアリストンの山に攻めてきた。」
「その話なら皆、知ってるよ。」
「そうだな細かい所は省略するが黒龍を封印するのにナーガ様は持っている力の限界まで使ってしまった。そのため、こんなに小さな身体になってしまった。」
「ヴァイス、俺の一番の見せ場を省略しすぎだ。」
「なるほどにゃ!」
「納得するな!」
「まあ、ナーガにゃら黒龍王アスラについて知ってること教えてくれにゃ?」
「黒龍王アスラのことは、俺も知らん!」
「にゃ?」
「龍珠に封じ込めたのは、純粋に黒龍の魔力だけだ。龍珠の封印が解けたのは感じた。しかし、出てきたのは黒龍と俺と人の魔力を持つ全くの別物だった。まあ、封印している間に混ざっちゃったんだろうな!」
「ナーガ、何か軽いにゃー!」
「ヴァイスが言っていた、厳格で強く優しかったってこういうことだったのね。」
「今のナーガ様は軽薄、見栄っ張りで弱いってことにゃ!」
「ヴァイス、お前、陰でそんなことを言っていたんだな。」
「ハハハって、そこまではっきりとは言っていませんけどね。」
「くそっ、仕方がない。こんな身体では…。しかし、良かったことも有る、純粋な黒龍の魔力ではないから直ぐに黒龍は復活出来ん。それまでに黒龍の本体と黒龍王アスラを倒してしまうことだな。頼んだぞ!」
「頼んだぞって、ナーガがまた封印するんじゃにゃいか?」
「さっき、お前が軽薄、見栄っ張りで弱いって言っていたじゃないか、俺には、今、そんな力は無い。と言う訳でお前達が戦うんだ。その為に修行をさせ、龍族の秘宝である龍神水まで飲ませて強くしたんだろ。」
「え、ナーガに会うための試練じゃにゃかったのか?」
「そんなものあるか。ミシワールのカザン王とダリスのアーク王から見込みがあるから鍛えるように頼まれたのだが聞いていないのか。」
「くっ、あのおやじ、手の込んだ真似をするにゃ!」