第14話 諜報部の依頼にゃ
俺たちは、デュークの執務室のソファーに座っていた。
「うーん、もふもふ。」
アリアが俺の右隣に座り、抱きついてきた。俺のふわふわの毛のもふもふ感にすっかり虜になっているようだ。
左側にはフィーネも同じように抱きついている。
そして、エリスは定位置――俺の頭の上で寝ていた。どうやら彼女の中では、俺はすでにベッドとして認識されているらしい。
男としての魅力ではなく、毛のもふもふ感で女の子たちを虜にしているのは少し複雑な気分だが、今までの人生で女の子に抱きつかれる経験などなかった俺にとっては、まるで天国のような状況だった。
「今さらですが、自己紹介させてもらいます。王国軍諜報部のデュークです。そして、この子は私の妹、アリアです。」
「アリアよ。」
「妖精剣のシデン。」
「フィーネです。」
「来人にゃん。」
「エリスだよ。」
「疑いが晴れたなら、もう用はないんじゃないの?」
「それはそうなんですが、あなた方の腕を見込んで、ひとつ仕事を依頼したいのです。」
「仕事?」
「はい。その前に、状況を説明させてください。最近、闇ギルドが禁制の強力な武器や薬品などを大量に集めていることが判明しています。目的は現在調査中です。相手が闇ギルドということもあり、王国軍は表立って手を出せない状況で、我々諜報部が裏で動いているのです。」
「相手が闇ギルドか……少々、厄介な相手だな。」
「ちょっと、闇ギルド相手の仕事なら断るわよ。」
「闇ギルドってそんなにヤバいのにゃ?」
「ヤバいも何も、暗殺や誘拐など、冒険者ギルドが受けない非合法な仕事をメインにしてる連中よ。ただ、国のお偉いさんが裏で依頼することもあるから、どの国も表立って対立していないの。」
「いやいや、今すぐ闇ギルドに対立しろと言うわけではありません。まず、今回のゴドーの件は秘密にしていただきたい。そして、闇ギルドに関する情報が入ったら、私に知らせてほしいのです。」
「まあ、それくらいなら了解した。」
「それから、ゴドーさんはどうなるにゃ?」
「しばらくは牢に入ってもらいますが、闇ギルドに脅されていたことを考慮すれば、罪は軽くなるでしょう。それに、すぐに釈放すれば、闇ギルドに裏切ったと思われる可能性もあるので、当分は牢の中の方が安全です。」
「それもそうだにゃ。」
「さて、仕事の内容ですが、私とアリアと共に、証拠品であるブラックポーションをリーンまで運んでいただきたいのです。残念ながら、私の部下はあなた方にやられてしまい、今は使い物になりませんから。」
「断ったら?」
「牢に戻ってもらいます。」
「選択の余地はないのね。」
「そうなりますね。」
「ずるいにゃん。」
「諜報部ですから、それくらいずるくないとやっていけません。それに、予算も人員も限られているので仕方がないのです。あなた方の腕を見込んでの依頼であることは確かですよ。」
「いいんじゃないか。どうせリーンまで行く予定だったんだから。」
「相変わらず、シデンは戦い以外には興味がないんだから。」
「出発は3日後ですので、よろしくお願いします。」




